相続税の計算方法を初心者向けに解説|基礎控除から納税額まで完全ガイド
親が亡くなって相続税を自分で計算してみようとしたものの、「遺産にそのまま税率をかければいいのか」「相続人が複数いるとき、誰がいくら払うのか」が分からず手が止まってしまう方は多いはずです。相続税の計算は、実は遺産総額に直接税率をかけるのではなく、いったん法定相続分で按分してから合算し、実際の取得割合で割り戻すという独特の流れをたどります。この順番を知らないと、計算結果が大きくずれてしまいます。この記事では、遺産の評価から最終的な各人の納税額まで、5つのステップを具体的な金額のケーススタディで一つずつ追いながら、初心者にも分かるように解説します。
相続税の計算は全体でどんな流れ?
相続税の計算は、①遺産総額の評価 ②基礎控除を引いて課税遺産総額を出す ③法定相続分で按分し各人の税額を計算して合算(=相続税の総額)④実際の取得割合で按分 ⑤各人の税額控除、という5ステップで進みます。
最大のポイントは③です。遺産を実際に誰がいくらもらったかに関係なく、いったん「全員が法定相続分どおりに取得した」と仮定して各人の税額を計算し、それを合計して「相続税の総額」を出します。こうすることで、遺産分割の仕方によって相続税の合計額が変わらないようにしているのです。
その総額を、④で実際の取得割合に応じて各相続人へ配分し直し、⑤で配偶者の税額軽減などの控除を引いて、ようやく一人ひとりの納める税額が確定します(国税庁 タックスアンサーNo.4152「相続税の計算」)。
ステップ①②:遺産総額の評価と基礎控除はいくら?
まず遺産をすべて評価して合計し、そこから基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を引きます。引いた残りが課税遺産総額です。
遺産には現預金・不動産・株式などのプラスの財産に加え、死亡保険金や死亡退職金(それぞれ500万円×法定相続人の数までは非課税)も含めます。一方、借入金や葬式費用はマイナスとして差し引けます。土地は路線価方式などで評価し、自宅であれば小規模宅地等の特例の対象になることもあります。
基礎控除は相続税がかかるかどうかの分かれ目です。たとえば法定相続人が3人なら、基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円。遺産総額がこの金額以下なら、相続税はかからず申告も原則不要です。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
ステップ③:相続税の総額はどう計算する?速算表
課税遺産総額を法定相続分で按分し、各取得金額に税率をかけて控除額を引き、各人の税額を出して合算したものが「相続税の総額」です。
ここで使うのが相続税の速算表です。各人の法定相続分に応じた取得金額に当てはめて計算します。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 0円 |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
たとえば法定相続分に応ずる取得金額が4,000万円の人なら、4,000万円×20%−200万円=600万円が税額です。この計算を全相続人ぶん行い、合計したものが相続税の総額になります。
ステップ④⑤:各人の納税額と税額控除は?
相続税の総額を、実際に遺産を取得した割合で各人に按分し、最後に税額控除を差し引いて一人ひとりの納税額を確定します。
④では、③で出した総額を「実際の取得割合」で配分します。多く相続した人ほど多く負担する仕組みです。
⑤では各種の税額控除を引きます。代表的なのが配偶者の税額軽減で、配偶者が取得した遺産のうち1億6,000万円、または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い額までは相続税がかかりません(国税庁 タックスアンサーNo.4158「配偶者の税額軽減」)。
逆に税額が増えるのが「2割加算」です。被相続人の配偶者・子・親以外の人(兄弟姉妹や、代襲でない孫など)が相続した場合、その人の税額が2割増しになります。
ケーススタディ:実際に①〜⑤を計算してみよう
【ケース】父が死亡。相続人は母・長男・長女の3人。遺産は自宅・預貯金など合計1億800万円。遺産分割は母が5,400万円、長男が2,700万円、長女が2,700万円を取得した。
- ①遺産総額の評価:1億800万円
- ②基礎控除を引く:基礎控除=3,000万円+600万円×3人=4,800万円。課税遺産総額=1億800万円−4,800万円=6,000万円
- ③法定相続分で按分し合算:法定相続分は母1/2・長男1/4・長女1/4。
- 母:6,000万円×1/2=3,000万円 → 3,000万円×15%−50万円=400万円
- 長男:6,000万円×1/4=1,500万円 → 1,500万円×15%−50万円=175万円
- 長女:同じく175万円
- 相続税の総額=400万円+175万円+175万円=750万円
- ④実際の取得割合で按分:取得割合は母50%・長男25%・長女25%。
- 母:750万円×50%=375万円
- 長男:750万円×25%=187.5万円
- 長女:187.5万円
- ⑤税額控除:母は配偶者の税額軽減により、取得額5,400万円が1億6,000万円以下なので相続税は0円。長男・長女はそれぞれ187.5万円を納付。
結果として、この家族が実際に納める相続税は長男・長女の合計375万円です。配偶者の税額軽減がいかに大きいかが分かります。
よくある質問(FAQ)
Q1. なぜ実際の取得額にいきなり税率をかけないの?
A. 遺産分割の仕方で相続税の合計額が変わってしまうのを防ぐためです。先に法定相続分で按分して総額を確定させることで、誰がどう分けても税金の合計は同じになり、不公平が生じません。確定した総額を後から実際の取得割合で配分する、という二段構えになっています。
Q2. 配偶者は1億6,000万円まで税金がかからないなら、全部相続すれば得?
A. 一概にそうとは言えません。配偶者の税額軽減で目先の相続税は抑えられますが、その配偶者が亡くなる二次相続では同じ軽減が使えず、子の負担が重くなることがあります。一次・二次を通した合計で考えるのが基本です。
Q3. 相続税の申告と納税の期限はいつまで?
A. 相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。この期限までに申告書の提出と現金一括での納税が原則必要です。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で税額が0円になる場合でも、適用を受けるには期限内の申告が必須です(国税庁 タックスアンサーNo.4205「相続税の申告と納税」)。
Q4. 法定相続人の数には誰を含める?
A. 配偶者と、子・親・兄弟姉妹のうち順位の高い人です。基礎控除や生命保険の非課税枠の計算では、相続放棄した人も「放棄がなかったもの」として人数に含めます。養子は実子がいる場合1人まで、いない場合2人までを法定相続人の数に算入できます。
まとめ
- 相続税は①評価 ②基礎控除を引く ③法定相続分で按分し合算(総額)④取得割合で按分 ⑤税額控除、の5ステップで計算する
- 基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数。遺産がこれ以下なら原則かからない
- ③でいったん法定相続分で按分するのが最大のポイント。総額を確定させてから実際の取得割合で配分する
- 配偶者は1億6,000万円または法定相続分まで非課税、配偶者・子・親以外は税額が2割加算される
- 申告・納税期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内(国税庁タックスアンサーNo.4152・No.4158)
相続税の計算は、速算表と5ステップの流れさえつかめば、おおよその金額は自分でも見積もれます。一方で、土地の評価や各種特例の適用、二次相続まで見据えた分割の判断は専門的で、誤ると納めすぎ・納め不足につながります。自分のケースで不安があれば、相続税に詳しい税理士や、市区町村・税務署の無料相談窓口に、申告期限に余裕をもって相談することをおすすめします。