暗号資産(仮想通貨)を相続したときの相続税評価はどう決まる?完全解説
暗号資産(仮想通貨)を相続や遺贈で受け取ったとき、その評価をどうするか迷う方は少なくありません。暗号資産は財産評価基本通達に個別の定めがなく、活発な市場があるかどうかで評価方法が分かれるのが特徴です。この記事では国税庁が公表するFAQ(令和7年12月26日付の「情報」)の内容を、一般的な考え方として整理します。
そもそも暗号資産を相続すると相続税はかかる?
暗号資産は「金銭に見積もることができる経済的価値のある財産」に当たるため、相続・遺贈・贈与で取得すると相続税または贈与税の課税対象になります。
暗号資産は資金決済法上、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値と規定されています。この性質から相続税法上の「経済的価値のある財産」に該当し、被相続人等から取得した場合には相続税等が課税されると整理されています(相法2、相法2の2、相基通11の2-1/国税庁FAQ4-1)。株式や預金と同じく、相続財産として申告に含める必要があるという理解が一般的です。
暗号資産はどうやって評価する?(評価通達に定めがない)
暗号資産の評価は財産評価基本通達に個別の定めがないため、評価通達5により、通達に定める他の財産の評価方法に「準じて」評価します。
土地や上場株式のように専用の評価ルールが用意されているわけではありません。そこで、評価方法の定めのない財産の評価を扱う評価通達5(関連して評価通達4-3)を根拠として、性質の近い財産の評価方法を準用する形が採られています(国税庁FAQ4-2)。具体的には、後述するとおり「活発な市場が存在するか否か」で準用先が変わります。
「活発な市場が存在する」暗号資産はいくらで評価する?
活発な市場が存在する暗号資産は、外国通貨に準じて、納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する「課税時期における取引価格」で評価します。
活発な取引によって客観的な交換価値が明らかであるため、外国通貨に準じた扱いとされています(国税庁FAQ4-2)。ここでいう「活発な市場が存在する」場合とは、暗号資産取引所または販売所において十分な数量および頻度で取引が行われ、継続的に価格情報が提供されている場合を指します(同FAQ4-2(注)1)。
活発な市場の有無で評価の入口が変わるため、まずはその暗号資産がどちらに当たるかを整理することが出発点になります。
| 区分 | 判断の目安 | 評価の考え方 |
|---|---|---|
| 活発な市場が存在する | 取引所・販売所で十分な数量・頻度の取引があり、継続的に価格情報が提供されている | 外国通貨に準じ、交換業者が公表する課税時期の取引価格で評価 |
| 活発な市場が存在しない | 客観的な交換価値を示す一定の相場が成立していない | 内容・性質・取引実態等を勘案し、売買実例価額や精通者意見価格等を参酌して個別評価 |
(出所:国税庁FAQ4-2 答本文および(注)1・5)
取引価格は具体的にどれを使う?(複数業者・売却価格・残高証明書)
評価に用いる取引価格には、交換業者が納税義務者の求めに応じて発行する残高証明書に記載された取引価格も含まれ、複数業者で取引がある場合は選択した業者の価格で評価して差し支えないとされています。
国税庁FAQ4-2の(注)では、実務上の細かな取扱いが示されています。整理すると次の流れになります(同FAQ4-2(注)2〜4)。
販売所で購入価格と売却価格の両方が公表されている場合には、売却価格で評価しても差し支えないとされています(同FAQ4-2(注)3)。実務では、交換業者に依頼して残高証明書を取得し、その価格を根拠資料とする方法が用いられることが多いようです。
活発な市場が存在しない暗号資産はどう評価する?
活発な市場が存在しない暗号資産は、客観的な交換価値を示す相場が成立していないため、内容・性質・取引実態等を勘案して個別に評価します。
この場合は一律の価格を当てはめられないため、その暗号資産の内容や性質、取引実態等を踏まえた個別評価が必要になります。国税庁FAQでは、例として売買実例価額や精通者意見価格等を参酌して評価する方法などが考えられるとされています(国税庁FAQ4-2 答本文および(注)5)。判断が難しいケースが多いため、実際の評価にあたっては専門家に相談することが望ましいと考えられます。
見落としやすい「贈与・遺贈した側」の課税に注意
暗号資産を贈与・遺贈した個人の側でも、その時の時価を総収入金額に算入する所得税の課税が生じる場合があります。
相続人に対する死因贈与を除く贈与や、包括遺贈および相続人に対する特定遺贈を除く遺贈によって暗号資産を移転させた場合、贈与・遺贈をした個人側では、所得税の計算上その時点の暗号資産の価額(時価)を総収入金額に算入する必要があるとされています(国税庁FAQ4-1(注)、2-10参照)。取得する側の相続税・贈与税だけに目が向きがちですが、移転させる側の所得税にも留意が必要という点は誤解されやすいところです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 暗号資産にも相続税はかかりますか?
A. 一般論として、暗号資産は経済的価値のある財産に当たり、相続・遺贈・贈与で取得すると相続税または贈与税の課税対象になると整理されています(国税庁FAQ4-1)。預金や株式と同様に相続財産として扱う必要があると考えられます。
Q2. 暗号資産の相続税評価額はどうやって決めますか?
A. 財産評価基本通達に個別の定めがないため、評価通達5に基づき他の財産の評価方法に準じて評価します。活発な市場が存在する暗号資産は、外国通貨に準じて交換業者が公表する課税時期の取引価格で評価するのが基本的な考え方です(国税庁FAQ4-2)。
Q3. 複数の取引所に暗号資産を預けている場合はどの価格を使いますか?
A. 複数の暗号資産交換業者で取引を行っている場合は、納税義務者が選択した交換業者が公表する課税時期の取引価格によって評価して差し支えないとされています(国税庁FAQ4-2(注)4)。
Q4. 評価の根拠資料には何を使えますか?
A. 交換業者が納税義務者の求めに応じて発行する残高証明書に記載された取引価格も、評価に用いる取引価格に含まれるとされています(国税庁FAQ4-2(注)2)。実務では残高証明書を根拠資料とする例が多いようです。
Q5. マイナーな暗号資産で市場価格がはっきりしない場合はどうなりますか?
A. 活発な市場が存在しない暗号資産は、内容・性質・取引実態等を勘案して個別に評価し、売買実例価額や精通者意見価格等を参酌する方法などが考えられるとされています(国税庁FAQ4-2(注)5)。個別性が高いため、専門家への相談が現実的です。
まとめ
- 課税対象になる:暗号資産は経済的価値のある財産として、相続・遺贈・贈与で取得すると相続税等の対象になります(国税庁FAQ4-1)。
- 評価は準用:財産評価基本通達に定めがないため、評価通達5により他の財産の評価方法に準じて評価します(国税庁FAQ4-2)。
- 市場の有無で分岐:活発な市場が存在する暗号資産は外国通貨に準じ、交換業者が公表する課税時期の取引価格で評価します。
- 実務の根拠資料:残高証明書の取引価格も利用でき、複数業者があれば選択した業者の価格で評価して差し支えないとされています(同FAQ4-2(注))。
- 市場がない場合は個別評価:一定の相場がないときは売買実例価額や精通者意見価格等を参酌して個別に評価します。
- 贈与・遺贈した側にも注意:移転させた個人側で所得税の課税が生じる場合があるため、取得側だけでなく双方の税務を確認することが大切です(国税庁FAQ4-1(注))。