貸家建付地の相続税評価とは?計算式と評価減のしくみをやさしく解説
アパートや賃貸マンションなど「貸家」の敷地を相続したとき、その土地は「貸家建付地」として、自分で使う土地(自用地)とは異なる方法で評価します。借家人の権利がある分、一般に評価額が下がる場合があります。ここでは財産評価基本通達26と国税庁タックスアンサーをもとに、計算のしくみを一般論として整理します。個別の判断は最新の資料や専門家にご確認ください。
貸家建付地とは何を指す?
貸家建付地とは、借家権の目的となっている家屋(貸家)の敷地の用に供されている宅地をいいます(財産評価基本通達26)。
自分の土地に自分でアパートを建てて他人に貸している場合、その土地が貸家建付地にあたります。借家人がその建物を使う権利を持つため、土地の利用がその分だけ制約されると考え、評価上の調整を行うしくみです(財産評価基本通達26)。
評価はどんな算式で計算する?
貸家建付地の価額は「自用地としての価額 − 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合」で計算します(国税庁タックスアンサーNo.4614)。
まず自用地(更地)としての価額を求め、そこから一定割合を差し引く形です。関連する評価方法を並べると次のとおりです。
| 区分 | 評価方法 |
|---|---|
| 貸家建付地(貸家の敷地) | 自用地価額 −(自用地価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合) |
| 課税時期に空き家となった家屋の敷地 | 自用地としての価額 |
| 貸家(建物本体) | 固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合) |
借地権割合・借家権割合はどこで確認する?
借地権割合は地域ごとに国税局長が定める割合で、借家権割合は現行では全国的に100分の30とされています(財産評価基本通達26・27、財産評価基準書令和7年分)。
借地権割合は、通達27の定めによるその宅地に係る割合を用います。取引慣行等がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長が定めており、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます(財産評価基本通達27、国税庁タックスアンサーNo.4614)。なお、ただし書に定める地域にある宅地については100分の20とされています(財産評価基本通達26(1))。借家権割合は借家権の評価に用いる割合で、現行では100分の30です(財産評価基準書令和7年分)。地域区分の具体値はケースにより異なるため、該当年分の路線価図等でのご確認が必要です。
賃貸割合はどう求める?
賃貸割合は「課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計 ÷ 当該家屋の各独立部分の床面積の合計」で計算します(財産評価基本通達26(2))。
アパートのように独立した部屋が複数ある場合、実際に貸している部分の割合を床面積で反映させます。ここでいう「各独立部分」とは、隔壁・扉・階層などで他の部分と完全に遮断され、独立した出入口を有するなど、独立して賃貸できる部分をいいます。ふすまや障子など堅固でない仕切りで分けた部分や、独立した出入口を持たない区分は該当しません。一方、共用の廊下や階段、エレベーターを通って外部と出入りできる構造は「独立した出入口を有するもの」に含まれます(財産評価基本通達26(2)注1)。
空室があるときはどう扱う?
継続的に賃貸されてきた部分が課税時期に一時的に空室だった場合は、賃貸割合の計算上「賃貸されている部分」に含めて差し支えないとされています(財産評価基本通達26(2)注2)。
一時的な空室にあたるかは、課税時期前に継続的に賃貸されてきたか、退去後すみやかに募集したか、空室期間中に他の用途に使っていないか、空室期間が課税時期の前後の例えば1ケ月程度など一時的か、課税時期後の賃貸が一時的でないか、といった事実関係から総合的に判断します(質疑応答事例「貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲」)。1ケ月程度はあくまで判断の一要素で、確定的な数値基準ではありません。
空き家になっている場合はどうなる?
以前は貸家でも課税時期に空き家となっている独立家屋の敷地は、貸家建付地ではなく自用地としての価額で評価します(質疑応答事例)。
貸家建付地の評価は借家権の目的となっている家屋の敷地に限られます。そのため、賃貸用として新築した家屋でも、課税時期に現実に貸し付けられていない家屋の敷地は自用地としての価額で評価する取扱いとされ、誤解されやすい打切り点です(質疑応答事例「貸家が空き家となっている場合の貸家建付地の評価」)。
建物(貸家)本体の評価は?
貸家の建物は「固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)」で評価します(国税庁タックスアンサーNo.4602、財産評価基本通達93)。
建物本体も、固定資産税評価額から借家権割合と賃貸割合に応じた金額を控除します。なお借家権自体は財産評価基本通達94で算定しますが、権利金等の名称で取引される慣行のない地域にあるものは評価しないとされ、借家権として財産計上されないことも多いとされています(財産評価基本通達94)。
よくある質問(FAQ)
Q1. 借家権割合は何%ですか?
A. 現行では、借家権の価額を評価する場合の借家権割合は100分の30とされています(財産評価基準書令和7年分・財産評価基本通達94)。貸家建付地や貸家建物の評価にもこの割合を用います。
Q2. アパートに空室があると評価はどうなりますか?
A. 賃貸割合を床面積の割合で計算するため、空室があると評価減が小さくなる方向に働きます。ただし継続的に賃貸してきた部分が課税時期に一時的に空室だった場合は、賃貸中として扱って差し支えないとされています(財産評価基本通達26(2)注2)。
Q3. 相続のときにすでに空き家だった場合は?
A. 課税時期に空き家となっている独立家屋の敷地は、貸家建付地ではなく自用地としての価額で評価する取扱いとされています(質疑応答事例)。賃貸用に建てた家屋でも、現実に貸し付けられていなければ同様とされています。
Q4. 借地権割合はどこで確認できますか?
A. 地域ごとに国税局長が定める割合で、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます(財産評価基本通達27、国税庁タックスアンサーNo.4614)。具体的な区分は年分・地域によって異なります。
Q5. 貸家の建物はどう評価しますか?
A. 固定資産税評価額に(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)を乗じて評価します(国税庁タックスアンサーNo.4602、財産評価基本通達93)。土地(貸家建付地)と建物はそれぞれ別に評価します。
まとめ
- 貸家建付地は貸家の敷地で、財産評価基本通達26により自用地とは異なる方法で評価します。
- 評価算式は「自用地価額 −(自用地価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)」です(国税庁タックスアンサーNo.4614)。
- 借家権割合は現行で100分の30、借地権割合は地域ごとに定められ路線価図等で確認します。
- 賃貸割合は床面積の割合で求め、一時的な空室は賃貸中として扱える場合があります(財産評価基本通達26(2))。
- 課税時期に空き家の敷地は自用地評価となる点が打切り点です(質疑応答事例)。
- 建物本体は別に評価し「固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)」を用います(国税庁タックスアンサーNo.4602)。個別の判断は専門家にご相談ください。