貸宅地(底地)の相続税評価はどう計算する?算式と特殊ケースを解説
親から貸宅地(いわゆる底地)を相続すると、自分で使っている土地とは評価の考え方が変わります。土地の上に借地権などの権利が乗っている分だけ、自用地よりも評価額が下がるのが基本です。ここでは国税庁のタックスアンサーや財産評価基本通達に沿って、原則の算式と、注意が必要な特殊ケースを一般論として整理します。実際の判断は個別事情によりますので、詳細は専門家や所轄税務署にご確認ください。
そもそも貸宅地(底地)とは?
貸宅地とは、借地権など「宅地の上に存する権利の目的となっている宅地」をいいます(タックスアンサーNo.4613)。
自分の土地に他人が建物を建てて使っている状態、つまり地主として地代を受け取っている土地が典型例です。土地には借地人の権利が乗っているため、地主が自由に使える土地(自用地)よりも制約があり、その分だけ相続税評価額が低くなります。貸宅地は、乗っている権利の区分(借地権/定期借地権等/地上権/区分地上権/区分地上権に準ずる地役権)に応じて評価方法が分かれ、狭義の貸宅地(底地)は主に「借地権の目的となっている宅地」を指します(財産評価基本通達25(1)〜(5))。
借地権の目的となっている宅地はどう評価する?
原則は「自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合)」で評価します(財産評価基本通達25(1)、タックスアンサーNo.4613)。
通達25(1)の原文は「自用地としての価額から、通達27(借地権の評価)で評価した借地権の価額を控除した金額」と定めています。借地権の価額は原則として「自用地としての価額 × 借地権割合」で求めるため、結果として算式は上記のかたちになります(財産評価基本通達27)。参考として「自用地としての価額 ×(1 − 借地権割合)」という書き方もされますが、これは借地権を原則どおり評価する場合の言い換えで、後述の特殊ケースでは扱いが変わる点に注意が必要です。
借地権割合は、国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で地域ごとに定められており、そこで確認します(タックスアンサーNo.4613)。なお、借地権の取引慣行がないと認められる地域にある貸宅地を評価する場合は、借地権割合を20パーセント(100分の20)として計算します(財産評価基本通達25(1)ただし書・27ただし書、タックスアンサーNo.4613)。
定期借地権・地上権の場合はどう変わる?
乗っている権利の種類によって、控除する割合や算式が変わります(財産評価基本通達25(2)(3))。
定期借地権等の目的となっている宅地は、原則として自用地としての価額から定期借地権等の価額(通達27-2)を控除して評価します。ただし、その控除額が「自用地価額 × 残存期間に応じた割合」を下回る場合には、後者の割合方式で計算した控除額を用います(財産評価基本通達25(2)、タックスアンサーNo.4613)。残存期間に応じた割合は次のとおりです。
| 残存期間 | 自用地価額に乗じる割合 |
|---|---|
| 5年以下 | 5パーセント(100分の5) |
| 5年超10年以下 | 10パーセント(100分の10) |
| 10年超15年以下 | 15パーセント(100分の15) |
| 15年超 | 20パーセント(100分の20) |
(財産評価基本通達25(2)イ〜ニ)
また、地上権(建物所有を目的とする借地権を除く)の目的となっている宅地は「自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 相続税法第23条に定める地上権の割合)」で評価します(財産評価基本通達25(3)、タックスアンサーNo.4613)。このほか、国税局長が「貸宅地割合」を定めている地域では、借地権の目的となっている宅地はその自用地としての価額に貸宅地割合を乗じた金額で評価します(財産評価基本通達25(1)ただし書)。
相当の地代や無償返還届出書がある場合は?
同族会社への貸付など、相当の地代や無償返還届出書が関係する場合は、評価が自用地価額の80パーセントになるなど特別な扱いになります(相当の地代通達/直資2-58)。
「相当の地代」とは、権利金の支払に代えて、土地の自用地としての価額に対しておおむね年6パーセント程度で支払う地代をいい、権利金の授受慣行がある地域が前提です。この計算に用いる自用地としての価額は、設定・相続等の年以前3年間の平均額によります(相当の地代通達1、同注1)。相当の地代を収受していて権利金を収受しておらず、特別の経済的利益も受けていない場合、貸宅地の価額は自用地としての価額の80パーセント(100分の80)で評価します(相当の地代通達6(1))。この場合、対応する借地権の価額は零(ゼロ)として扱われます(相当の地代通達3(1))。
相当の地代を収受しているが権利金等がある場合は、自用地価額から借地権価額を控除して求めますが、その金額が自用地価額の80パーセントを超えるときは80パーセント相当額が上限となります(相当の地代通達6(2)ただし書)。
「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている土地では、賃貸借の場合は貸宅地を自用地としての価額の80パーセントで評価し、使用貸借の場合は自用地としての価額そのもの(100パーセント)で評価します(相当の地代通達8、同注)。この場合、その土地に係る借地権の価額は零(ゼロ)として取り扱われます(相当の地代通達5)。なお、権利金の授受慣行がある地域で通常の地代を支払って設定・相続等があった通常のケースは、この相当の地代通達によらず、従来どおり通達25の原則で評価します(相当の地代通達 趣旨)。
| ケース | 貸宅地(底地)の評価 |
|---|---|
| 借地権の目的となっている宅地(原則) | 自用地価額 − 自用地価額 × 借地権割合 |
| 相当の地代収受・権利金等なし | 自用地価額の80パーセント |
| 無償返還届出書あり(賃貸借) | 自用地価額の80パーセント |
| 無償返還届出書あり(使用貸借) | 自用地価額(100パーセント) |
よくある質問(FAQ)
Q1. 貸宅地は自用地よりどのくらい評価が下がりますか?
A. 原則は借地権の価額(自用地価額 × 借地権割合)を控除するため、借地権割合が高い地域ほど底地の評価は低くなります。借地権割合は地域ごとに財産評価基準書で定められているので、まずはその割合を確認する必要があります(タックスアンサーNo.4613)。
Q2. 借地権割合はどこで確認できますか?
A. 国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で地域ごとに確認できます。なお借地権の取引慣行がないと認められる地域では、借地権割合を20パーセントとして計算します(財産評価基本通達25(1)ただし書、タックスアンサーNo.4613)。
Q3. 同族会社に土地を貸していて無償返還届出書を出しています。評価はどうなりますか?
A. 無償返還に関する届出書が提出されている賃貸借の土地は、貸宅地を自用地としての価額の80パーセントで評価するのが原則です。ただし使用貸借の場合は自用地としての価額そのもの(100パーセント)で評価します(相当の地代通達8)。
Q4. 相当の地代を受け取っている場合はどう評価しますか?
A. 相当の地代を収受していて権利金を受け取っておらず、特別の経済的利益もない場合は、貸宅地を自用地としての価額の80パーセントで評価します。権利金等がある場合は借地権価額を控除して求めますが、80パーセント相当額が上限とされます(相当の地代通達6)。
Q5. 定期借地権が設定された土地の評価は普通の借地権と同じですか?
A. 同じではありません。定期借地権等の目的となっている宅地は、原則として定期借地権等の価額を控除しますが、その控除額が残存期間に応じた割合(5〜20パーセント)で計算した額を下回る場合は後者を用います(財産評価基本通達25(2))。残存期間によって扱いが変わる点が特徴です。
まとめ
- 貸宅地とは権利の目的となっている宅地で、乗っている権利の分だけ自用地より評価が下がります(タックスアンサーNo.4613)。
- 原則の算式は「自用地価額 − 自用地価額 × 借地権割合」で、借地権割合は財産評価基準書で確認します(財産評価基本通達25(1))。
- 取引慣行がない地域は借地権割合20パーセントとして計算します(財産評価基本通達25(1)ただし書)。
- 定期借地権や地上権は別の割合・算式が用いられ、残存期間などで扱いが変わります(財産評価基本通達25(2)(3))。
- 相当の地代・無償返還届出書があると自用地価額の80パーセント等の特別な扱いになります(相当の地代通達6・8)。
- 通常の地代・通常のケースは原則どおり通達25で評価するため、まず自分のケースがどの区分かを見極めることが大切です(相当の地代通達 趣旨)。