借地権を相続したときの相続税評価は?普通借地権の計算を完全解説
他人の土地を借りて自宅やアパートを建てている場合、その「借地権」も財産として相続税の課税対象になります。ここでは普通借地権を中心に、評価の基本となる考え方や注意点を、国税庁の通達やタックスアンサーに沿って一般的に整理します。個別のケースでは専門家への確認をおすすめします。
そもそも借地権とは何を指す?
借地権とは「建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権」をいい、相続税・贈与税の課税対象になります。
借地権は、建物を所有するために他人の土地を借りる権利で、借地借家法2条1号に定義があります(国税庁タックスアンサー No.4611)。土地そのものは所有していなくても、借りて使う権利に財産的な価値が認められるため、相続や贈与の際に評価の対象となります(借地借家法2一)。
借地権にはどんな種類がある?
評価上は、旧借地法・借地借家法による「借地権」と、定期借地権等(4種類)に大きく分かれます。
借地権は5種類に区分されます(No.4611)。評価の場面では、下表の(1)を「借地権(普通借地権)」、(2)〜(5)をまとめて「定期借地権等」として扱います。
| 区分 | 根拠 | 評価上の扱い |
|---|---|---|
| (1) 借地権 | 旧借地法・借地借家法 | 借地権として評価 |
| (2) 定期借地権 | 借地借家法22条 | 定期借地権等として評価 |
| (3) 事業用定期借地権等 | 借地借家法23条 | 定期借地権等として評価 |
| (4) 建物譲渡特約付借地権 | 借地借家法24条 | 定期借地権等として評価 |
| (5) 一時使用目的の借地権 | 借地借家法25条 | 定期借地権等(別方法)として評価 |
普通借地権はどう評価する?
普通借地権の価額は、その宅地の自用地としての価額に借地権割合を乗じて求めます。
普通借地権の価額は、借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に借地権割合を乗じて計算します(財産評価基本通達27、No.4611)。借地権割合は借地事情が似ている地域ごとに定められており、路線価図や評価倍率表に表示されています。
借地権割合はどこで確認する?
路線価図では各路線価の右隣にA〜Gの記号が付され、この記号が借地権割合に対応します。
たとえば「215D」という表示は、1平方メートル当たりの路線価215,000円・借地権割合60%を示します(国税庁「路線価図の説明」、記号D=60%)。記号A〜Gがそれぞれ割合に対応しますが、各記号の具体的な割合は路線価図の凡例で必ず確認するようにしてください。地域によって割合は異なります。
全国どこでも「自用地価額×借地権割合」になる?
そうとは限りません。取引慣行があると認められる地域以外では、借地権の価額は評価しない(ゼロ評価)とされています。
これは誤解されやすい重要な点です。財産評価基本通達27のただし書きにより、権利金等の授受など借地権の取引慣行があると認められる地域「以外」の地域にある借地権の価額は評価しないとされています(財基通27ただし書き)。つまり、どこでも一律に自用地価額×借地権割合で評価するわけではありません。
定期借地権等や一時使用の借地権は?
定期借地権等は経済的利益と存続期間を基に評定し、一時使用目的の借地権は雑種地の賃借権に準じて評価します。
定期借地権等の価額は、原則として課税時期において借地権者に帰属する経済的利益およびその存続期間を基に評定した価額で評価します(財基通27-2)。課税上弊害がない場合に限り、所定の算式による数値を自用地価額に乗じる方法も認められています。
一時使用目的の借地権は、通常の借地権割合を用いる方法は適当でなく、雑種地の賃借権の評価方法に準じて評価します(No.4611、相法23)。地上権に準ずると認められる賃借権は「雑種地の自用地価額×(法定地上権割合と借地権割合のいずれか低い割合)」、それ以外の賃借権は「雑種地の自用地価額×法定地上権割合×1/2」で評価できます。
なお、「27-2以降がすべて定期借地権の別扱い」という理解は正確ではありません。27-3は定期借地権等の設定時の経済的利益の総額の計算、27-4は区分地上権、27-5は区分地上権に準ずる地役権、27-6は権利が競合する場合の借地権等の評価であり、定期借地権専用の条項ではありません(財基通27-3〜27-6)。区分地上権や地役権では、たとえば地下鉄等のずい道所有目的の区分地上権を100分の30とすることができるなど、区分ごとに割合の定めがあります(財基通27-4、27-5)。
評価に使う明細書は?
借地権全般は「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」、定期借地権等は「定期借地権等の評価明細書」を用いて評価できます。
No.4611の根拠法令等は「相法23、評基通9、27、27-2、87、令5課評2-74」とされています。また、借地権に関連する派生的な評価区分として、貸家建付借地権等(財基通28)、転貸借地権(29)、転借権(30)、借家人の有する権利(31)などが定められており、31にも取引慣行のない地域では評価しない旨のただし書きがあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 借地権も相続税の対象になりますか?
A. はい、借地権は建物所有を目的とする地上権または土地の賃借権として財産的価値が認められ、相続税・贈与税の課税対象になります(No.4611、借地借家法2一)。土地を所有していなくても評価の対象となります。
Q2. 普通借地権はどのように計算しますか?
A. 原則として、その宅地の自用地としての価額に借地権割合を乗じて評価します(財基通27、No.4611)。借地権割合は地域ごとに定められ、路線価図や評価倍率表で確認できます。
Q3. 借地権割合はどこで調べられますか?
A. 路線価図で各路線価の右隣に付されたA〜Gの記号が借地権割合に対応します。たとえば「215D」は路線価215,000円・借地権割合60%を示します(「路線価図の説明」)。具体的な割合は凡例で確認してください。
Q4. どんな場合でも借地権に値段がつきますか?
A. いいえ。借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権は、価額を評価しないとされています(財基通27ただし書き)。地域によって扱いが異なる点に注意が必要です。
Q5. 定期借地権や一時使用の借地権も同じ計算ですか?
A. いいえ、別の方法によります。定期借地権等は経済的利益と存続期間を基に評定し(財基通27-2)、一時使用目的の借地権は雑種地の賃借権に準じて評価します(No.4611、相法23)。区分に応じた評価が必要です。
まとめ
- 借地権は課税対象:建物所有を目的とする地上権・土地の賃借権として相続税・贈与税の対象になります(No.4611)。
- 普通借地権の基本算式:自用地としての価額×借地権割合で評価するのが原則です(財基通27)。
- 借地権割合の確認先:路線価図のA〜Gの記号で確認でき、たとえば記号Dは60%です(「路線価図の説明」)。
- 一律ではない点に注意:取引慣行のない地域では借地権を評価しない(ゼロ評価)とされています(財基通27ただし書き)。
- 区分ごとに方法が違う:定期借地権等(財基通27-2)や一時使用目的の借地権(No.4611)は普通借地権と異なる方法で評価します。
- 専門家への確認を:評価は地域や契約内容で変わるため、個別のケースは税務署や専門家に確認するのが安心です。