山林を相続したときの相続税評価は?3つの区分と計算方法を完全解説
山林を相続すると、その評価方法は宅地とは異なるルールで決まります。相続税の計算上、山林は「純山林・中間山林・市街地山林」の3つに区分され、区分ごとに評価方式が変わるのが特徴です。ここでは財産評価基本通達などをもとに、山林評価の基本的な考え方を一般的な範囲で整理します。実際の判定は個別事情によって異なるため、詳細は専門家や所轄税務署への確認が前提となります。
山林はどのように評価する?まず3つの区分を押さえる
山林の評価は、財産評価基本通達45で「純山林・中間山林・市街地山林」の3区分に分け、区分ごとに定められた方式で行うのが原則です。
土地は宅地・田・畑・山林などの地目ごとに評価し、評価方法には路線価方式と倍率方式があります(国税庁タックスアンサーNo.4602)。山林の多くは路線価が定められていない地域にあり、その場合は倍率方式(固定資産税評価額×倍率)で計算します。倍率や路線価は国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認します(No.4602)。
区分の考え方は次のとおりです。純山林と中間山林は倍率方式、市街地山林は原則として宅地に準じた比準方式で評価します(財産評価基本通達45)。なお、かつての通達46や通達49-2はすでに削除されており、現行の条文としては存在しません(財産評価基本通達46・49-2)。
純山林・中間山林はどう計算する?
純山林・中間山林は、いずれも固定資産税評価額に国税局長が定める倍率を乗じる倍率方式で評価します。
純山林は、その山林の固定資産税評価額に、地勢・土層・林産物の搬出の便などが類似する地域ごとに国税局長が定める倍率を乗じて評価します(財産評価基本通達47)。中間山林は、地価事情の類似する地域ごとに国税局長が定める倍率を乗じて評価します(財産評価基本通達48)。中間山林とは「通常の山林と状況を異にするため純山林として評価することを不適当と認めるもの」を指します(財産評価基本通達45(1)括弧書き)。
いずれも倍率の具体的な数値は地域ごとに評価倍率表で定められており、案件ごとに確認が必要です。
市街地山林はどう評価する?宅地比準方式とは
市街地山林は原則として、宅地とした場合の1㎡価額から造成費を控除した宅地比準方式で評価しますが、倍率地域では倍率方式によることもできます。
市街地山林の宅地比準方式は、「その山林が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」から「宅地に転用する場合に通常必要と認められる1㎡当たりの造成費(整地・土盛り・土止めに要する費用として国税局長が地域ごとに定める金額)」を控除し、地積を乗じて計算します(財産評価基本通達49)。ただし、倍率が定められている地域では固定資産税評価額×倍率で評価できます(同通達49ただし書)。
宅地とした場合の1㎡価額は、付近の宅地を通達11の方式で評価した1㎡価額を基に、位置・形状などの条件差を考慮して求めます。地積規模の大きな宅地(通達20-2)の適用対象となるときは、同項を適用して計算する点に留意します(財産評価基本通達49(注)1)。造成費の実額は各国税局の財産評価基準書に依拠し、地域・年分ごとに異なります。
なお、市街地山林でも「宅地への転用が見込めないと認められる場合」は、近隣の純山林の価額に比準して評価します(財産評価基本通達49なお書)。この「見込めない場合」とは、(1)宅地比準で評価した価額が近隣純山林比準額を下回る場合、(2)急傾斜地等で宅地造成ができないと認められる場合、をいいます(同通達49(注)2)。
区分ごとの評価方式を一覧で確認したい
純山林・中間山林は倍率方式、市街地山林は宅地比準方式(倍率地域は倍率方式)が基本形です。
| 区分 | 主な評価方式 | 計算のイメージ |
|---|---|---|
| 純山林 | 倍率方式 | 固定資産税評価額 × 国税局長が定める倍率(通達47) |
| 中間山林 | 倍率方式 | 固定資産税評価額 × 国税局長が定める倍率(通達48) |
| 市街地山林(原則) | 宅地比準方式 | (宅地とした場合の1㎡価額 − 1㎡造成費)× 地積(通達49) |
| 市街地山林(倍率地域) | 倍率方式 | 固定資産税評価額 × 倍率(通達49ただし書) |
| 市街地山林(転用見込めず) | 純山林比準 | 近隣純山林の価額に比準(通達49なお書) |
どの区分に当たるかの判定は、実務上は評価倍率表の地区区分などで示されることが多く、個別のケースごとに確認が必要です。
保安林や緑地保全地区の山林は評価が下がる?
利用や伐採に法令上の制限がある山林は、通常の評価額から一定割合を控除して評価する仕組みがあります。
保安林等(森林法その他の法令で土地利用・立木伐採の制限を受ける山林)は、通達45〜49で評価した価額から、その価額に通達123に定める割合を乗じた金額を控除して評価します(財産評価基本通達50)。なお、保安林は地方税法348条2項7号により固定資産税が非課税とされています(同通達50(注)、地方税法348条2項7号)。
また、特別緑地保全地区内にある山林(林業のため伐採が認められ、かつ純山林に該当するものを除く)は、通達45〜49で評価した価額から、その価額に100分の80を乗じた金額を控除して評価します(財産評価基本通達50-2)。実質的に2割程度で評価される計算になります。
立木も別に評価するの?土地と立木の関係
山林(土地)の評価と、その上に生えている立木の評価は別建てで行い、立木は通達113以下で評価します。
森林の主要樹種(杉・ひのき)の立木は、標準価額表の価額に、地味級・立木度・地利級に応じた割合を連乗し、地積を乗じて計算します(財産評価基本通達113)。それ以外の立木は売買実例価額や精通者意見価格等で評価します(同通達122)。伐採の禁止・制限を受ける立木(保安林等の立木)は、通達113・117・122で評価した価額から、伐採関係の区分に応じた控除割合を乗じた金額を控除します(同通達123)。
さらに、相続税の課税価格に算入すべき立木の価額は、相続または遺贈(包括遺贈および被相続人から相続人に対する遺贈に限る)により取得した立木については、取得時の立木の時価に100分の85を乗じた金額とされます(相続税法26条)。特定遺贈による第三者取得などは対象外とされる点に注意が必要です。
山林の相続税に特例はある?納税猶予の制度
一定の要件を満たす林業経営には、山林についての相続税の納税猶予及び免除の特例があります。
特定森林経営計画が定められた区域内の山林を、一定の被相続人から相続・遺贈で取得した林業経営相続人が自ら山林経営を行う場合、特例山林に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予され、林業経営相続人の死亡によって免除されます(国税庁タックスアンサーNo.4149、措法70の6の6)。要件や継続届出があり、通常の山林評価とは別の適用要件が定められているため、利用を検討する場合は詳細な確認が必要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 山林の評価はいつも路線価で計算するのですか?
A. いいえ、一般に山林の多くは路線価が定められていない地域にあり、その場合は倍率方式(固定資産税評価額×倍率)で計算します。倍率や路線価は国税庁「財産評価基準書」で確認します(国税庁No.4602)。ケースによって異なるため個別の確認が前提です。
Q2. 純山林・中間山林・市街地山林の区分はどう決まりますか?
A. 中間山林は「純山林として評価するのが不適当なもの」と通達で定義されていますが(通達45(1))、実務上の区分は評価倍率表の地区区分などで示されることが多いとされています。明確な線引きは個別事情によるため、所轄税務署等への確認が安心です。
Q3. 市街地山林は必ず宅地比準方式ですか?
A. 原則は宅地とした場合の価額から造成費を控除する宅地比準方式ですが、倍率が定められている地域では倍率方式によることもできます(通達49ただし書)。また宅地への転用が見込めないと認められる場合は、近隣の純山林の価額に比準して評価します(通達49なお書)。
Q4. 土地とは別に立木にも相続税がかかりますか?
A. 山林(土地)と立木は別建てで評価します。立木は通達113以下で評価し、相続や包括遺贈などで取得した立木は時価に100分の85を乗じた金額を課税価格に算入するとされています(相続税法26条)。適用範囲に限定がある点には注意が必要です。
Q5. 保安林を相続した場合は評価が下がりますか?
A. 保安林等は利用・伐採の制限に応じて、通常の評価額から一定割合を控除して評価する扱いがあります(通達50・123)。また保安林は固定資産税が非課税とされています(地方税法348条2項7号)。控除割合は区分によって異なります。
まとめ
- 3区分が出発点:山林は純山林・中間山林・市街地山林に区分し、区分ごとに評価方式が変わります(通達45)。
- 純山林・中間山林は倍率方式:固定資産税評価額に国税局長が定める倍率を乗じて評価します(通達47・48)。
- 市街地山林は原則宅地比準方式:宅地とした場合の価額から造成費を控除しますが、倍率地域や転用不能なケースは別扱いです(通達49)。
- 制限のある山林は控除あり:保安林等や特別緑地保全地区内の山林は一定割合を控除して評価します(通達50・50-2)。
- 土地と立木は別評価:立木は別建てで評価し、相続等で取得した立木には時価×100分の85の取扱いがあります(通達113、相続税法26条)。
- 納税猶予の特例も検討余地:要件を満たす林業経営には納税猶予及び免除の特例があります(No.4149、措法70の6の6)。実際の判断は個別事情によるため、専門家や税務署への確認をおすすめします。