地積規模の大きな宅地の評価とは?旧・広大地評価との違いを完全解説
広い宅地は、そのままの路線価で評価すると分割分譲などにかかるコストが反映されず、実態より高く評価されがちです。この点を調整するために設けられているのが「地積規模の大きな宅地の評価」です。ここでは相続税・贈与税の実務で使われるこの制度の要件と計算の考え方を、国税庁の資料をもとに一般論として整理します。
地積規模の大きな宅地の評価とは?
面積の大きい宅地について「規模格差補正率」を乗じて評価額を調整する、財産評価基本通達20-2の定めです。
対象となる税目は相続税・贈与税です(財産評価基本通達20-2)(国税庁タックスアンサーNo.4609)。中心となる規定は評基通20-2で、関連して21-2・22-2・39・40・49・58-3などが根拠法令等として挙げられています。
どのくらいの広さが対象になる?
三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の地積が目安です。
面積の下限は所在地域によって異なります(通達20-2本文)。
| 所在地域 | 対象となる地積の下限 |
|---|---|
| 三大都市圏 | 500㎡以上 |
| 三大都市圏以外の地域 | 1,000㎡以上 |
なお三大都市圏とは、首都圏整備法・近畿圏整備法・中部圏開発整備法に定める一定の区域をいいます(タックスアンサーNo.4609 注2)。具体的にどの市区町村が含まれるかは各年分の路線価図・評価倍率表などで個別に確認が必要です。
対象にならない宅地(適用除外)は?
市街化調整区域・工業専用地域・一定以上の容積率の地域・大規模工場用地は対象から除かれます。
次のいずれかに該当する宅地は「地積規模の大きな宅地」から除かれます(タックスアンサーNo.4609 注1/通達20-2)。
- 市街化調整区域(一定の開発行為ができる区域を除く)に所在する宅地
- 用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
- 指定容積率が400%(東京都の特別区では300%)以上の地域に所在する宅地
- 財産評価基本通達22-2に定める大規模工場用地
どの地区・地域が対象になる?
路線価地域では普通商業・併用住宅地区と普通住宅地区に限られ、倍率地域では該当すれば対象になります。
路線価地域では、対象となる宅地は普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区に所在するものに限られます(通達20-2)。倍率地域では、面積などの要件を満たして地積規模の大きな宅地に該当すれば対象となります(タックスアンサーNo.4609)。
評価額はどう計算する?
各種の画地補正率に加えて「規模格差補正率」を乗じて評価します。
路線価地域では、路線価に奥行価格補正率・不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に地積を乗じて評価します(国税庁パンフレット「地積規模の大きな宅地の評価が新設されました」)。規模格差補正率は次の算式で計算し、小数点以下第2位未満を切り捨てます(通達20-2 注1)。
Ⓑ・Ⓒの値は所在地域と地積の区分ごとに定められています(通達20-2 表イ・ロ)。
| 所在地域 | 地積の区分 | Ⓑ | Ⓒ |
|---|---|---|---|
| 三大都市圏 | 500㎡以上1,000㎡未満 | 0.95 | 25 |
| 三大都市圏 | 1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.90 | 75 |
| 三大都市圏 | 3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 225 |
| 三大都市圏 | 5,000㎡以上 | 0.80 | 475 |
| 三大都市圏以外 | 1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.90 | 100 |
| 三大都市圏以外 | 3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 250 |
| 三大都市圏以外 | 5,000㎡以上 | 0.80 | 500 |
倍率地域ではどう評価する?
「固定資産税評価額×倍率」と「規模格差補正率などを反映した価額」のいずれか低い価額で評価します。
倍率地域では、①固定資産税評価額に倍率を乗じた価額と、②標準的な間口・奥行を有する宅地とした場合の1㎡当たり価額に普通住宅地区の奥行価格補正率などの各種画地補正率と規模格差補正率を乗じ、地積を乗じた価額とを比べ、いずれか低い方で評価します(タックスアンサーNo.4609)。また市街地農地・市街地周辺農地・市街地山林・市街地原野についても、宅地であるとした場合にこの評価の対象に該当するときは、同様の考え方が適用されます。
旧・広大地評価とはどう違う?いつから適用?
平成29年9月の通達改正で新設され、平成30年1月1日以後に取得する宅地に適用され、従前の広大地評価は廃止されました。
この制度は平成29年9月の財産評価基本通達の一部改正で新設され(通達20-2追加)、平成30年1月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得する宅地に適用されます(国税庁パンフレット)。この改正に伴い、従前の「広大地の評価」(改正前の評価通達24-4)は廃止されました。かつての広大地評価が個別性の高い判断を要したのに対し、現行制度は面積区分による規模格差補正率で計算する点が特徴といえます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 500㎡あれば必ず対象になりますか?
A. 面積は要件の一つにすぎません。三大都市圏では500㎡以上が目安ですが、地区区分や容積率などの適用除外に該当しないことも必要です(タックスアンサーNo.4609)。個別の判断はケースによって異なります。
Q2. 三大都市圏に含まれるかはどう調べますか?
A. 三大都市圏は首都圏整備法などに定める区域を指します(通達20-2 注2)。具体的な市区町村は各年分の路線価図・評価倍率表や国税庁の三大都市圏一覧で確認するのが一般的です。
Q3. 規模格差補正率はどんな算式ですか?
A. {(Ⓐ×Ⓑ)+Ⓒ}÷Ⓐ×0.8で計算し、小数点以下第2位未満を切り捨てます(通達20-2 注1)。Ⓐはその宅地の地積(㎡)で、Ⓑ・Ⓒは所在地域と地積区分ごとに定められています。
Q4. 旧・広大地評価はもう使えないのですか?
A. 平成30年1月1日以後に取得する宅地については、旧・広大地評価は廃止され現行の地積規模の大きな宅地の評価によります(国税庁パンフレット)。過去の取得時期については取扱いが異なる場合があります。
Q5. 農地や山林でも対象になりますか?
A. 市街地農地・市街地周辺農地・市街地山林・市街地原野は、宅地であるとした場合にこの評価の対象に該当すれば、宅地であるとした場合の1㎡当たり価額に本制度が適用されます(タックスアンサーNo.4609)。
まとめ
- 根拠は通達20-2:相続税・贈与税で広い宅地を評価する定めです(財産評価基本通達20-2)。
- 面積要件:三大都市圏は500㎡以上、それ以外は1,000㎡以上が目安です。
- 適用除外に注意:市街化調整区域・工業専用地域・容積率400%(特別区300%)以上・大規模工場用地は対象外です。
- 計算の要は規模格差補正率:各種画地補正率に加えて乗じ、小数点以下第2位未満を切り捨てます。
- 適用時期:平成30年1月1日以後の取得分に適用され、旧・広大地評価は廃止されました。
- 個別確認を:三大都市圏の該当や具体的な補正はケースにより異なるため、最新の国税庁資料で確認することをおすすめします。