定期借地権の相続税評価はどう計算する?底地や3類型の評価方法をやさしく解説
親から土地や借地の権利を相続したとき、「定期借地権」という言葉が出てくると、普通の借地権とどう違うのか戸惑う方が多いはずです。定期借地権等は相続税では独立した財産として評価され、その計算方法は普通借地権とは根本的に異なります。この記事では、定期借地権等の相続税評価の仕組み・計算式・具体例・注意点を、一次情報(国税庁の通達)に沿ってやさしく整理します。
そもそも定期借地権とは?相続税ではどう扱われる?
定期借地権等は「宅地の上に存する権利」の一つとして、相続税で独立して評価される財産です。
土地そのものを相続していなくても、その土地を借りて使う「権利」に財産的な価値があるため、相続税の課税対象になります。定期借地権等は、財産評価基本通達の第2章第2節に、普通借地権(27)や区分地上権(27-4)などと並んで位置づけられています。
ここで整理しておきたいのが、立場によって評価する対象が変わる点です。
- 借地人(土地を借りている側) … 「定期借地権等」そのものを評価します(財基通27-2)。
- 地主(土地を貸している側) … 定期借地権等が設定された土地=「底地(そこち)」を評価します。これは貸宅地の一類型で、「定期借地権等の目的となっている宅地」と呼ばれます(財基通25(2))。
つまり、同じ一筆の土地でも、亡くなった方が借地人だったのか地主だったのかで、評価の考え方がまったく異なります。
定期借地権の3つの種類とは?期間はどう違う?
定期借地権等は借地借家法に定められた3類型があり、契約の種類によって存続期間が異なります。
一口に「定期借地権」といっても、借地借家法上は次の3つに分かれます。契約書に書かれている種類を確認することが第一歩です。
| 種類 | 根拠(借地借家法) | 存続期間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 一般定期借地権 | 第22条 | 50年以上 | 公正証書等の書面で契約。更新なし |
| 事業用定期借地権等 | 第23条 | 30年以上50年未満、または10年以上30年未満 | 事業用の建物所有が目的 |
| 建物譲渡特約付借地権 | 第24条 | 30年以上 | 期間満了で建物を地主に譲渡する特約付き |
一般定期借地権の「借地借家法第22条・存続期間50年以上」は国税庁タックスアンサー等でも確認できる内容です。事業用定期借地権等・建物譲渡特約付借地権の期間の考え方は上表のとおりとされていますが、契約ごとの正確な内容は必ず契約書(公正証書等)で確認してください。
借地人側の定期借地権はどう評価する?
原則は「借地人に帰属する経済的利益と存続期間」を基に評価し、課税上弊害がなければ複利年金現価率を使う簡便的な算式で評価します(財基通27-2)。
財産評価基本通達27-2は次のように定めています。
> 定期借地権等の価額は、原則として、課税時期において借地権者に帰属する経済的利益及びその存続期間を基として評定した価額によって評価する。ただし、課税上弊害がない限り、その定期借地権等の目的となっている宅地の課税時期における自用地としての価額に、次の算式により計算した数値を乗じて計算した金額によって評価する。
ここでいう「経済的利益」の中身は財基通27-3で定められており、次の3つの合計とされています。
- 権利金・協力金・礼金など、返還を要しない金銭や財産の額
- 保証金・敷金など返還を要するもので、約定利率が基準年利率未満(または無利息)の場合に生じる利益
- 実質的に贈与を受けたと認められる差額地代の額
なお、上記のただし書きで使う具体的な算式は、国税庁の通達ページ上で画像として掲載されており本文テキストとしては抽出できないため、実際の計算では国税庁の「定期借地権等の評価明細書」や複利表を用いて確認する必要があります。
地主側の底地(貸宅地)はどう評価する?
原則は「自用地としての価額から定期借地権等の価額を差し引いた金額」で、一定の下限が設けられています(財基通25(2))。
底地(定期借地権等の目的となっている宅地)の評価は、次の考え方が基本です。
- 原則 … 自用地としての価額 − 27-2で評価した定期借地権等の価額
- 下限特例 … 上記で求めた定期借地権等の価額が「自用地価額 × 残存期間に応じる割合」を下回る場合は、次で評価します。
- 自用地価額 −(自用地価額 × 残存期間に応じる割合)
「残存期間に応じる割合」は、相続が発生した時点で契約の残り期間があと何年あるかによって、次のように決まっています。
| 残存期間 | 割合 |
|---|---|
| 5年以下 | 100分の5(5%) |
| 5年超10年以下 | 100分の10(10%) |
| 10年超15年以下 | 100分の15(15%) |
| 15年超 | 100分の20(20%) |
契約期間が長く残っているほど、地主が取り戻せる価値が小さいとみなされ、控除できる割合が大きくなる仕組みです。
一般定期借地権の底地には簡便な計算方法がある?
一般定期借地権については、地域によって「底地割合」を使った簡便な評価方法が認められています(平成10年課評2-2)。
一般定期借地権の目的となっている宅地(底地)は、課税上弊害がない場合、国税庁の個別通達に定められた「底地割合」を用いて評価できます。
- 評価額 = 自用地としての価額 −「一般定期借地権の価額に相当する金額」
- 一般定期借地権の価額に相当する金額 = 自用地価額 ×(1−底地割合)×(課税時期の残存期間年数に応ずる複利年金現価率 ÷ 設定期間年数に応ずる複利年金現価率)
なお、この算式は国税庁の個別通達に基づくものですが、算式部分は通達ページ上で画像として示されているため、実際に計算する際は国税庁の「定期借地権等の評価明細書」や複利表で確認するのが確実です。
底地割合は、その地域の借地権割合に応じて次のように定められています。
| 地域区分 | 借地権割合 | 底地割合 |
|---|---|---|
| C | 70% | 55% |
| D | 60% | 60% |
| E | 50% | 65% |
| F | 40% | 70% |
| G | 30% | 75% |
注意したいのは、この簡便法が使えるのはC〜G地域に限られるという点です。A地域・B地域、および借地権取引の慣行がない地域では使えず、その場合は財基通25(2)の原則的な方法で評価します。
具体例で計算するとどうなる?
残存期間割合を使う「下限特例」のケースなら、確定した割合だけで底地の評価額を計算できます。
複利年金現価率を使う計算は国税庁の複利表を参照する必要がありますが、ここでは残存期間割合による下限特例のシンプルな例を見てみましょう。
【前提】
- 自用地としての価額:5,000万円
- 相続時点での契約の残存期間:20年(→「15年超」なので割合は20%)
- 計算した定期借地権等の価額が、自用地価額×残存期間割合を下回っていたと仮定
【計算】
- 控除額 = 5,000万円 × 20% = 1,000万円
- 底地の評価額 = 5,000万円 − 1,000万円 = 4,000万円
このように、下限特例が適用される場合は、自用地価額から「自用地価額×残存期間割合」を差し引くだけで底地の評価額が求められます。
一方、一般定期借地権の簡便法(底地割合を使う方法)で計算する場合は、たとえば自用地価額5,000万円・D地域(底地割合60%)・設定期間50年・残存40年といった前提でも、最後に「残存期間の複利年金現価率 ÷ 設定期間の複利年金現価率」を掛けるため、国税庁が公表する複利表から2つの率を取得しないと金額まで確定できません。実務では複利表の確認が必須になります。
普通借地権とはどこが違う?
普通借地権が「自用地価額×借地権割合」で評価されるのに対し、定期借地権等は借地権割合をそのまま掛けない点が根本的に違います。
普通借地権(財基通27)は、自用地としての価額に借地権割合を掛けるシンプルな評価です。これに対し定期借地権等(財基通27-2)は、原則として「経済的利益+存続期間」を基礎とし、課税上弊害がなければ複利年金現価率を用いた簡便法で評価します。
| 項目 | 普通借地権 | 定期借地権等 |
|---|---|---|
| 根拠通達 | 財基通27 | 財基通27-2 |
| 権利の評価 | 自用地価額×借地権割合 | 経済的利益+存続期間(または簡便算式) |
| 底地の評価 | 自用地価額×(1−借地権割合)中心 | 自用地価額−定期借地権価額(残存期間割合の下限あり) |
| 契約更新 | あり | なし(期間満了で終了) |
契約に期限があり更新されないという定期借地権の性質が、評価方法の違いにも表れています。
よくある質問
Q1. 定期借地権はどの通達で評価するのですか?
A. 借地人側の定期借地権そのものは財産評価基本通達27-2、地主側の底地(定期借地権等の目的となっている宅地)は財基通25(2)で評価します。経済的利益の内訳は27-3に定められています。
Q2. 「底地割合」を使う簡便法は誰でも使えますか?
A. いいえ。一般定期借地権で、かつC〜G地域に限られます。A地域・B地域や借地権取引の慣行がない地域では使えず、原則的な方法で評価します。また、借地人が地主の親族や同族会社など「課税上弊害がある」とされる関係の場合も簡便法は使えず、原則評価になります。
Q3. 残存期間が短いと底地の評価はどうなりますか?
A. 残存期間が短いほど控除できる割合が小さくなります。割合は5年以下で5%、5年超10年以下で10%、10年超15年以下で15%、15年超で20%と定められています(財基通25(2))。
Q4. 複利年金現価率はどこで確認できますか?
A. 国税庁が公表している「基準年利率」および「複利表」で確認します。定期借地権等の簡便法は残存期間・設定期間それぞれの複利年金現価率を用いるため、これらの率を取得しないと金額まで計算できません。国税庁の「定期借地権等の評価明細書」を使うと計算しやすくなっています。
Q5. 保証金や権利金も評価に関係しますか?
A. はい。返還を要しない権利金・礼金などのほか、返還を要する保証金・敷金でも約定利率が基準年利率未満(または無利息)の場合に生じる利益、実質的な贈与とされる差額地代が「経済的利益」として評価に反映されます(財基通27-3)。
まとめ
定期借地権等の相続税評価は、「借地人側の権利(財基通27-2)」と「地主側の底地(財基通25(2))」で計算の枠組みが分かれます。借地人側は経済的利益と存続期間を基礎とし、地主側は自用地価額から権利価額を控除して残存期間割合の下限を確認します。一般定期借地権では、C〜G地域に限り底地割合を使う簡便法も認められています。ただし、複利年金現価率を使う計算や課税上弊害の判定など、専門的な確認が必要な場面が多い分野です。契約書(公正証書等)と国税庁の評価明細書・複利表を手元に、判断に迷うときは税理士など専門家に相談することをおすすめします。
(出典:財産評価基本通達25・27-2・27-3、個別通達「一般定期借地権の目的となっている宅地の評価に関する取扱いについて」平成10年課評2-2、国税庁タックスアンサーNo.4611・No.4612・No.4613、借地借家法)