立木(りゅうぼく)の相続税評価はどうする?計算方法と85%評価の仕組みをやさしく解説
山林を相続すると、土地そのものだけでなく、そこに生えている杉やひのきなどの「立木(りゅうぼく)」も相続財産として評価しなければなりません。立木は土地とは別に評価するうえ、独特の計算式や補正率が使われるため、分かりにくいと感じる方が多い分野です。この記事では、相続に直面した一般の方に向けて、立木の相続税評価の仕組み・計算方法・注意点を、一次情報にもとづいてQ&A形式で整理します。
そもそも立木は相続税で何として評価するの?
立木・立竹は「立竹木(りゅうちくもく)」として、土地である山林とは別個の財産として評価します。 つまり、山林を相続したときは「土地としての山林」と「その上に生えている立木」を別々に評価し、合算するイメージです。
財産評価基本通達では、立木の評価単位が次のように決められています。
- 森林の立木:樹種および樹齢を同じくする1団地の立木ごと
- それ以外の立木:1本ごと
- 庭園にある立竹木:その庭園にあるもの全部
- 立竹:1団地ごと
このように、同じ「木」でも、森林の立木なのか、庭木なのか、竹なのかによって評価の単位そのものが変わります。
(財産評価基本通達111、国税庁「立竹木」)
立木には「85%評価」があると聞いたけど本当?
本当です。相続または一定の遺贈で取得した立木は、その時価に100分の85(85%)を乗じた金額で評価します。 これは相続税法第26条に定められた立木特有のルールで、土地である山林には適用されません。立木にだけ認められた評価上の軽減です。
条文では「相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。)により取得した立木の価額は、当該立木を取得した時における立木の時価に百分の八十五の割合を乗じて算出した金額による」とされています。
ここで注意したいのは、85%が使えるのは「相続」または「包括遺贈・相続人に対する遺贈」で取得した場合に限られるという点です。相続人以外の人への単純な特定遺贈や、生前の贈与で取得した立木には、この85%評価は適用されないと考えられます。
(相続税法第26条)
森林の立木の評価はどう計算するの?
杉・ひのきなど森林の主要樹種は、「標準価額 × 地味級の割合 × 立木度の割合 × 地利級の割合 × 地積」で立木の時価を求め、そこに85%を乗じて相続税評価額を計算します。 4つの割合を順にかけ合わせ(連乗)、最後に面積を掛ける方式です。
それぞれの意味は次のとおりです。
- 標準価額:1ヘクタール当たりの基準となる価額(国税庁が別表で定める)
- 地味級:土地の肥えぐあい(木の育ちやすさ)による補正
- 立木度:立木の密集の度合いによる補正
- 地利級:木材の搬出のしやすさ(便・不便)による補正
- 地積:森林の面積(岩石やがけ崩れなどの不利用地は除く)
国税局長が標準価額を定めている主要樹種以外の立木も、同じ「標準価額×地味級×立木度×地利級×地積」で評価できます。標準価額の定めがない樹種は、売買実例価額や精通者意見価格などを参考に評価します。
(財産評価基本通達113、117)
森林ではない立木や庭木、竹はどう評価する?
森林の立木以外の立木は、売買実例価額や精通者意見価格などを参考に評価します。庭木や竹はさらに別の扱いになります。 すべての木を同じ計算式に当てはめるわけではない点に注意が必要です。
区分ごとの評価方法を整理すると次のようになります。
| 区分 | 評価方法 | 85%評価 |
|---|---|---|
| 森林の主要樹種(杉・ひのき)の立木 | 標準価額 × 地味級 × 立木度 × 地利級 × 地積 | 適用(相続等) |
| 主要樹種以外の立木(標準価額あり) | 上と同じ連乗方式 | 適用(相続等) |
| 主要樹種以外の立木(標準価額なし) | 売買実例価額・精通者意見価格等 | 適用(相続等) |
| 森林の立木以外の立木(庭園を除く) | 売買実例価額・精通者意見価格等 | 適用(相続等) |
| 立竹(竹) | 売買実例価額等 | ― |
| 庭園にある立木・立竹 | 庭園設備と一括して附属設備等として評価 | ― |
庭園の立木や立竹は、庭石や庭池などの庭園設備とひとまとめにして、附属設備等の評価方法(財産評価基本通達92(3))で評価します。庭木を1本ずつ立木として計算するわけではありません。
(財産評価基本通達122、124、125)
地味級・立木度などの補正率はどのくらい?
地味級は上級1.3・中級1.0・下級0.6、立木度は密1.0・中庸0.8・疎0.6という割合が定められています。 これらは杉・ひのきに共通する補正率です。
- 地味級(土地の肥えぐあい):上級=1.3/中級=1.0/下級=0.6。判定は樹齢別・平均1本当たりの立木材積による判定表で行い、表にない樹種・樹齢は原則1.0とされます。
- 立木度(立木の密集度):密=1.0/中庸=0.8/疎=0.6。人が植えた植林の森林はおおむね「密」、自然林はおおむね「中庸」と扱われます。
- 地利級(搬出の便否):距離をもとにした判定表で決まります。級ごとの具体的な割合は判定表による定めですが、本記事では確定した数値を示せる範囲にとどめます。
また、木の育ちには「標準伐期(伐採の目安となる樹齢)」という考え方があり、杉・ひのきについて国税局や林業地帯ごとに定められています。標準伐期を超える樹齢の立木は、超えた年数分を年1.5%の複利で調整し、標準伐期の2倍を超えるようなものは事情に詳しい人(精通者)の意見によって評価します。
(財産評価基本通達116、118、119、121)
具体的な計算例で見てみたい
確定している補正率を使って、計算の流れを具体的にたどってみましょう。 ここでは、地味級・立木度・85%という原文で確認できた確定値を使い、標準価額と地利級の割合は説明のための仮の数値として計算例を示します。
【前提(説明用の例)】
- 樹種:杉(森林の主要樹種)
- 地積:2ヘクタール
- 樹齢:標準伐期程度
- 地味級:中級 → 1.0(確定値)
- 立木度:密 → 1.0(確定値)
- 標準価額:1ヘクタール当たり 300,000円(※仮の数値。実際は国税庁の別表で定める実数を使用)
- 地利級の割合:1.0(※仮の数値。実際は地利級判定表で判定)
【計算】
- 立木の時価
300,000円 × 1.0(地味級)× 1.0(立木度)× 1.0(地利級)× 2ha = 600,000円
- 相続税評価額(相続税法26条の85%を適用)
600,000円 × 0.85 = 510,000円
このように、まず4つの割合と地積をかけて立木の時価を出し、最後に85%を掛けて相続税評価額を求めます。
なお、上記の「標準価額」と「地利級の割合」は説明のための仮の数値です。実際の申告では、国税庁が定める「主要樹種の森林の立木の標準価額表(別表)」と「地利級判定表」の実数を用いる必要があります。地味級1.0・立木度1.0・85%の3つは確定した数値として使えますが、それ以外は必ず現行の国税庁資料で確認してください。
(相続税法第26条、財産評価基本通達113、118、119)
伐採が制限された立木は評価が下がるの?
保安林など、法令で伐採が禁止・制限されている立木は、通常の評価額から一定割合を控除できます。 自由に伐採して換金できない分、評価上の調整が認められているためです。
保安林等の立木は、伐採関係の区分に応じて次の割合を控除します。
| 伐採制限の区分 | 控除割合 |
|---|---|
| 一部皆伐 | 0.3 |
| 択伐 | 0.5 |
| 単木選伐 | 0.7 |
| 禁伐 | 0.8 |
また、都市計画で定められる「特別緑地保全地区」内の立木は、林業目的の伐採が認められるものを除き、評価額からその価額の80%(100分の80)を控除するとされています。伐採が厳しく制限されるほど、控除は大きくなる仕組みです。
(財産評価基本通達123、123-2)
分収林契約がある立木はどう扱う?
分収林契約がある場合は、立木の評価額に「分収割合」を乗じて評価します。 分収林とは、土地の所有者・造林する人・費用を負担する人などが、将来の収益を一定割合で分け合う契約です。
- 造林した人が持つ立木:評価額 × その人の分収割合
- 費用負担者・土地所有者が持つ「分収期待権」:立木の評価額 × その分収割合
このとき、分収期待権のもとになる立木の価額を評価する際にも、相続税法26条の85%が適用される点が注目されます。契約で権利が分かれている場合は、それぞれの持分割合に応じて評価する、と理解しておくとよいでしょう。
(財産評価基本通達126、127)
立木の申告はどの書類でするの?
立木の評価は、国税庁の「山林・森林の立木の評価明細書」(様式番号B2-12)を使って計算します。 山林(土地)と立木は別々に評価するため、立木部分についてはこの明細書で標準価額や各補正率を当てはめて計算していくことになります。
山林の土地部分は、純山林・中間山林・市街地山林といった区分に応じて、倍率方式や宅地比準方式などの土地の評価方法で別途評価します。土地と立木の両方を評価して合算する、という全体像を押さえておきましょう。
(国税庁「山林・森林の立木の評価明細書」B2-12)
よくある質問
Q1. 立木の85%評価は、贈与でもらった山林の木にも使えますか?
A. 相続税法第26条の85%評価は、相続または「包括遺贈・被相続人からの相続人に対する遺贈」で取得した立木に限られると定められています。したがって、相続人以外への単純な特定遺贈や、生前贈与で取得した立木には適用されないと考えられます。
Q2. 山林を相続したら、土地と立木は別々に評価するのですか?
A. はい。立木は「立竹木」として、土地である山林とは別個の財産として評価します。山林の土地部分は土地の評価方法(純山林・中間山林・市街地山林の区分)で、立木は立木の評価方法で評価し、両方を合算します。85%評価は立木にのみ適用され、土地には適用されません。
Q3. 庭にある木や竹も立木として1本ずつ計算しますか?
A. 庭園にある立木や立竹は、庭石などの庭園設備とひとまとめにして、附属設備等の評価方法で評価します。庭木を森林の立木のように1本ずつ計算式に当てはめるわけではありません。竹(立竹)は売買実例価額などを参考に評価します。
Q4. 地味級や立木度の割合はいくつですか?
A. 杉・ひのきに共通で、地味級は上級1.3・中級1.0・下級0.6、立木度は密1.0・中庸0.8・疎0.6と定められています。地利級については、距離をもとにした判定表で判定するとされています。
Q5. 保安林は評価が安くなりますか?
A. 伐採が禁止・制限されている保安林等の立木は、通常の評価額から一定割合を控除できます。区分に応じて、一部皆伐0.3・択伐0.5・単木選伐0.7・禁伐0.8の割合を控除するとされています。伐採制限が厳しいほど控除は大きくなります。
まとめ
立木の相続税評価は、次のポイントを押さえておくと全体像がつかみやすくなります。
- 立木は土地である山林とは別個の財産(立竹木)として評価し、両方を合算する
- 相続または一定の遺贈で取得した立木は、時価に85%を乗じて評価する(相続税法26条)
- 森林の主要樹種(杉・ひのき)は「標準価額 × 地味級 × 立木度 × 地利級 × 地積」で時価を求める
- 地味級(上級1.3/中級1.0/下級0.6)、立木度(密1.0/中庸0.8/疎0.6)などの補正率がある
- 保安林や特別緑地保全地区内の立木、分収林契約のある立木には、控除や分収割合といった特別な扱いがある
- 実際の申告では「山林・森林の立木の評価明細書」(B2-12)を用い、標準価額や地利級の割合は国税庁の最新の表で確認する
立木の評価には、標準価額や地利級判定表など、国税庁が定める具体的な数値を参照する必要があります。山林や森林を相続した場合は、本記事で示した仕組みを踏まえつつ、最新の資料や専門家に確認しながら評価を進めることをおすすめします。
(出典:相続税法第26条、財産評価基本通達111・113・116・117・118・119・121・122・123・123-2・124・125・126・127、国税庁「山林・森林の立木の評価明細書」B2-12)