庭園設備の相続税評価はどうやって計算する?調達価額の70%で評価する仕組みを解説
自宅の庭に立派な庭石や庭木、庭池、あずまやがある場合、それらも相続税の課税対象になります。土地や建物とは別に「庭園設備」として評価するルールがあり、計算方法も決まっています。この記事では、庭園設備の相続税評価の仕組みと計算方法を、相続に直面した一般の方向けにやさしく解説します。
そもそも庭園設備とは相続税で何として評価するの?
庭園設備は、財産評価基本通達92「附属設備等の評価」のなかの一類型として、土地や建物とは別に単独で評価します。
相続税では、家屋にくっついている設備を「附属設備」と呼び、次の3つに区分して評価します。
- 家屋と構造上一体となっている設備(電気・ガス・給排水設備など)
- 門・塀等の設備
- 庭園設備
このうち庭園設備は3番目にあたります。庭園設備とは、通達で「庭木、庭石、あずまや、庭池等をいう」と定義されています。つまり、庭に植えられた観賞用の樹木、据えられた庭石、東屋(あずまや)、池などがまとめて庭園設備として扱われます。
ここで大切なのは、庭園設備は家屋の価額に含めて評価するものではなく、別建ての「附属設備」として独立して評価するという点です。家屋と一体の電気・給排水設備(1番目の区分)が家屋価額に含めて評価されるのとは扱いが異なります。
庭園設備の評価額はどうやって計算するの?
庭園設備の価額は「その庭園設備の調達価額 × 70/100(100分の70)」で計算します。
計算式そのものはとてもシンプルで、調達価額に0.7を掛けるだけです。門・塀のような減価償却の控除や、耐用年数に応じた補正、倍率といった追加の調整は、庭園設備には規定されていません。調達価額に直接0.7を乗じた金額が評価額になります。
問題になるのは「調達価額」が何を指すのかです。通達では、調達価額を「課税時期においてその財産をその財産の現況により取得する場合の価額をいう」と定めています。ここは誤解が多いところなので、次の節でくわしく説明します。
「調達価額」とは新品を作り直す費用のこと?
いいえ、調達価額は新品を新しく造り直す費用ではなく、課税時期にその財産を「現況(現状のまま)」で取得する場合の価額です。
たとえば、長年経過して風合いのついた庭石や、大きく育った庭木を、いまさら新品同様に造り直したらいくらかかるか、という金額ではありません。通達が求めているのは、亡くなった時点(課税時期)で、その庭園設備を「いまの状態のまま」手に入れるとしたらいくら払うか、という価額です。
古くなった設備や、逆に年数を経て価値が出た庭木などは、現況を反映した価額で見積もることになります。実務では造園業者などの見積りが参考にされますが、どのように査定するかを具体的に示した国税庁の文書は今回確認できた範囲では特定できませんでした。実際の評価にあたっては、専門家や税務署に確認することをおすすめします。
具体的な数値で計算するとどうなるの?
調達価額が500万円と査定された庭園設備なら、評価額は500万円 × 0.70 = 350万円になります。
架空の前提で計算してみましょう。
- 庭石・庭木・庭池等の一式について、課税時期に現況のまま取得する場合の価額(調達価額)を 500万円 と査定したとします。
- 評価額 = 5,000,000円 × 0.70 = 3,500,000円
このように、調達価額さえ決まれば計算は0.7を掛けるだけです。門・塀のように途中で減価償却費を差し引く手順は入りません。※上記の金額は説明のための仮の数値であり、実際の査定額は個々の庭園設備の状態によって変わります。
門・塀や家屋一体の設備とは計算方法が違うの?
はい、同じ附属設備でも区分によって評価方法が異なり、庭園設備だけが「調達価額 × 70/100」という独自の計算になります。
同じ通達92のなかでも、区分ごとに扱いが違います。整理すると次の表のとおりです。
| 区分 | 対象の例 | 評価方法 | 減価償却の控除 |
|---|---|---|---|
| (1)家屋と構造上一体の設備 | 電気・ガス・給排水設備等 | 家屋価額に含めて評価(単独では評価しない) | ― |
| (2)門・塀等の設備 | 門、塀など | 再建築価額 −(建築時から課税時期までの償却費相当額)→ その額の100分の70 | あり(定率法) |
| (3)庭園設備 | 庭木、庭石、あずまや、庭池等 | 調達価額 × 100分の70 | なし |
門・塀(2番目の区分)は、まず再建築価額を出し、そこから建築時から課税時期までの償却費または減価額を差し引いたうえで、その金額に70/100を掛けます。この償却は定率法により、耐用年数は耐用年数省令にもとづきます。一方、庭園設備(3番目)は減価償却の控除がなく、調達価額にそのまま0.7を掛ける点が大きな違いです。
また、電気や給排水など家屋と一体の設備(1番目)は、家屋の価額に含めて評価されるため、庭園設備のように単独で0.7を掛けることはしません。
庭の木は「立木」として評価しないの?
庭の観賞用の庭木は庭園設備として評価し、森林の立木・立竹などとは別の扱いになります。
相続税の財産評価では、森林などにある立木や立竹は「立竹木」として、財産評価基本通達の第5章第2節(通達111以降)で別途評価するルールがあります。しかし、庭に観賞用として植えられている庭木は、この立竹木ではなく庭園設備(通達92(3))に含まれます。庭の庭木を立木評価と取り違えないよう注意が必要です。
なお、建築中の家屋も「費用現価 × 100分の70」という同じ0.7を使う計算式ですが、これは建築中家屋(通達91)の評価であって、対象がまったく別物です。0.7という数字が共通しているだけで、庭園設備とは混同しないようにしましょう。
よくある質問
Q1. 庭園設備は土地や建物の評価とは別に相続税がかかるのですか?
A. はい。庭園設備は財産評価基本通達92の附属設備等の一類型として、土地や家屋とは別に評価します。家屋の価額に含めて評価する家屋一体の設備とは扱いが異なり、庭木・庭石・あずまや・庭池等は独立して評価の対象になります。
Q2. 庭園設備の評価額はどう計算しますか?
A. その庭園設備の調達価額に100分の70(0.70)を掛けて計算します。補正率や倍率、耐用年数による減価償却の控除などは規定されておらず、調達価額に0.7を乗じるだけです。
Q3. 調達価額とは、新しく庭を造り直す費用のことですか?
A. いいえ。調達価額は新品を造り直す費用ではなく、課税時期にその財産を「現況(現状のまま)」で取得する場合の価額とされています。いまの状態のまま手に入れるとしたらいくらか、という金額です。
Q4. 門や塀と庭園設備は同じ計算方法ですか?
A. 違います。門・塀等は再建築価額から償却費相当額を差し引いてから100分の70を掛けますが、庭園設備は減価償却の控除がなく、調達価額に直接100分の70を掛けます。同じ通達92のなかでも計算方法が分かれています。
Q5. 庭に植えた木は立木として評価するのですか?
A. 庭の観賞用の庭木は庭園設備として評価します。森林の立木・立竹などは別の節(通達111以降の立竹木)で評価する制度があり、庭木を立木評価と取り違えないよう注意が必要です。
まとめ
庭園設備(庭木・庭石・あずまや・庭池等)の相続税評価は、「調達価額 × 100分の70」というシンプルな計算式で行います。ポイントは、調達価額が新品を造り直す費用ではなく、課税時期に現況のまま取得する場合の価額であること、そして門・塀のような減価償却の控除がないことです。同じ附属設備でも区分によって計算が異なるため、庭に価値のある設備がある場合は、区分の切り分けと調達価額の査定について専門家に相談すると安心です。
(出典:財産評価基本通達92(附属設備等の評価)、同91、同第5章第2節 立竹木、国税庁タックスアンサーNo.4602 土地家屋の評価)