著作権に相続税はかかる? 著作権の相続税評価はどう計算するのかを解説
亡くなった方が作家やミュージシャンなどで、本や楽曲の「著作権」を持っていた場合、その著作権も相続税の課税対象になります。ただし土地や預金とは違い、著作権には特別な評価ルールが定められています。この記事では、著作権の相続税評価の仕組み・計算方法・具体的な計算例・注意点を、一次情報(国税庁の通達)の範囲でわかりやすく整理します。
そもそも著作権に相続税はかかるの?
著作権は相続税の課税財産であり、その価額は「時価」で評価します。
相続税は、亡くなった方から受け継いだ財産に対してかかる税金です。相続税法第22条(評価の原則)は「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により」評価すると定めており、著作権もこの対象になります。
もっとも「時価」といっても、著作権は市場で日々売買される預金や上場株式のようにわかりやすい相場がありません。そこで国税庁は、財産評価基本通達の第8章「その他の財産」第4節「著作権、出版権及び著作隣接権」に、著作権を評価するための専用の計算式を用意しています。相続に直面したときは、この専用ルールに沿って金額を求めることになります。
(出典: 相続税法第22条、財産評価基本通達 第8章第4節)
著作権の相続税評価はどう計算するの?
著作権は「年平均印税収入の額 × 0.5 × 評価倍率」という算式で評価します。
これは財産評価基本通達148(著作権の評価)に定められた計算式です。原則として著作者ごとに、その人の著作権をまとめて(一括して)評価しますが、個々の著作物に係る著作権について別々に評価することも認められています。
計算式を構成する3つの要素を、それぞれ噛み砕くと次のとおりです。
- 年平均印税収入の額: 課税時期(通常は亡くなった日)が属する年の、前年以前3年間の印税収入の年平均額です。たとえば令和7年に相続が起きたなら、令和6年・令和5年・令和4年の3年分の印税収入を平均します。個々の著作物ごとに評価する場合は、その著作物についての前年以前3年間の印税収入の年平均額を使います。
- 0.5(固定係数): 算式にあらかじめ組み込まれた固定の数値です。表を引く必要はなく、常に0.5をかけます。
- 評価倍率: これから先も「年平均印税収入の額」と同じだけ印税収入が続くと仮定したうえで、その収入が見込める期間に応じた複利年金現価率を使います。この期間は機械的に決めるのではなく、著作物に精通している者の意見等を基にして推算するとされています。
つまり、「毎年これくらい印税が入る作品が、あと何年くらい稼ぐか」を見積もり、その将来の収入を現在価値に割り引いて評価する、という考え方です。
(出典: 財産評価基本通達148)
評価倍率(複利年金現価率)はどうやって決めるの?
評価倍率には、印税収入が見込める期間と課税時期に応じた「基準年利率」を用いた複利年金現価率を使います。
複利年金現価率とは、「毎年一定額の収入が一定期間続くとき、その合計を現在の価値に割り引いた倍率」を表す数値です。国税庁が公表する「複利表」から、期間(年数)と利率の組み合わせで該当する数値を引きます。国税庁の複利表の注記でも、複利年金現価は定期借地権等・果樹・著作権・営業権・鉱業権等の評価に使うと明記されています。
利率のもとになる基準年利率は、財産評価基本通達4-4に基づいて、国税庁が年分ごとに法令解釈通達で定めています。令和7年分は、期間の区分に応じて次のようになっています。
| 期間の区分 | 対象年数 | 令和7年 各月の基準年利率 |
|---|---|---|
| 短期 | 1〜2年 | 0.50〜1.00% |
| 中期 | 3〜6年 | 0.75〜1.50% |
| 長期 | 7年以上 | 1.50〜2.00% |
課税時期が属する月の、年数(期間)に応ずる基準年利率を用いる点に注意してください。したがって複利年金現価率は「いつ相続が起きたか(月)」と「収入が何年続くと見積もったか」によって変わり、常に一つの決まった数値になるわけではありません。実際の評価では、その都度、公表されている複利表で該当する数値を確認します。
(出典: 財産評価基本通達148・4-4、令和7年分の基準年利率について(法令解釈通達)、国税庁 複利表)
具体的な計算例で見るとどうなるの?
「年平均印税収入 × 0.5 × 複利年金現価率」に数字を当てはめると、印税収入の実額から評価額を求められます。
ここでは、公式の係数・利率・複利年金現価率を使い、印税収入と年数だけを仮の数字にした計算例を1つ示します(印税額と年数は説明のための架空の前提です)。
前提
- ある作家の著作権を、令和7年5月に相続した
- 前年以前3年間の印税収入の年平均額 = 300万円(仮の数字)
- 印税収入が見込める期間(残存期間) = 精通者の意見により10年と推算(仮の数字)
- 期間10年は「長期(7年以上)」の区分にあたり、令和7年5月分の基準年利率 = 1.5%
- 年1.5%・10年に対応する複利年金現価率 = 9.222(国税庁の令和7年分 複利表の値)
計算
- 300万円 × 0.5 × 9.222 = 約1,383万円
このように、毎年の印税収入がそれなりにあり、まだ長く収入が続くと見込まれる著作権ほど評価額は大きくなります。逆に、印税収入がほとんどない著作物や、収入が見込める期間が短いと判断される著作権は、評価額が小さくなります。なお実際の申告では、残存期間の見積もりや印税の集計に専門的な判断が必要になるため、税理士など専門家に相談するのが安全です。
(出典: 財産評価基本通達148、国税庁 複利表(令和7年1・5月分)。係数0.5・利率1.5%・複利年金現価率9.222は公式値、印税額と年数は説明用の仮定)
出版権や著作隣接権も同じように評価するの?
著作隣接権は著作権と同じ算式で評価しますが、出版権は独立して評価しない扱いです。
似た名前の権利でも、相続税評価上の扱いは異なります。区分ごとに整理すると次のとおりです。
| 権利の区分 | 評価方法 | 根拠(財産評価基本通達) |
|---|---|---|
| 著作権 | 年平均印税収入の額 × 0.5 × 評価倍率 | 148 |
| 著作隣接権(実演家・レコード製作者等) | 148(著作権の評価)を準用して評価 | 154-2 |
| 出版権(出版業を営む者が持つ場合) | 営業権の価額に含めて評価 | 154 |
| 出版権(その他の者が持つ場合) | 評価しない | 154 |
| 特許権など | 第4節ではなく別の節(第1節・140系)で別の算式 | 140ほか |
著作隣接権とは、実演家やレコード製作者などが持つ権利のことで、著作権に準じて同じ計算式で評価します。一方、出版権は、出版業を営んでいる人が持つ場合は営業権の価額に含めて評価し、それ以外の人が持つ場合は評価しない、とされています。
なお、かつて存在した通達149は現在「削除」されて欠番になっています。古い解説書や情報で149という条番号を見かけても、生きた条文としては使わないよう注意してください。特許権は同じ第8章にありますが第1節(140系)の別枠で、著作権とは算式が異なります。
(出典: 財産評価基本通達148、154、154-2、149(削除))
よくある質問
Q1. 著作権にも必ず相続税がかかりますか?
A. 著作権は相続税の課税財産であり、時価で評価して課税対象になります。ただし評価額は「年平均印税収入の額 × 0.5 × 評価倍率」で計算され、印税収入がほとんどない著作権は評価額が小さくなります。相続税がかかるかどうかは、他の相続財産と合わせた総額が基礎控除を超えるかどうかで決まります。
Q2. 印税収入がまったくない著作権の評価はどうなりますか?
A. 評価額は「年平均印税収入の額」を基礎に計算されるため、前年以前3年間の印税収入がなければ、その分だけ評価額は小さくなります。ただし具体的な取り扱いは個々の事情によるため、専門家への確認をおすすめします。
Q3. 評価倍率(複利年金現価率)はどこで確認できますか?
A. 国税庁が公表している「複利表」で確認できます。課税時期が属する月の基準年利率と、印税収入が見込める期間(年数)の組み合わせで該当する数値を引きます。基準年利率は年分ごとに国税庁が法令解釈通達で定めています。
Q4. 印税収入が見込める期間(残存期間)は何年で計算しますか?
A. 財産評価基本通達148は、この期間を「著作物に関し精通している者の意見等を基として推算する」としており、一律の年数を機械的に当てはめるものではありません。作品ごとに、今後どれくらい印税収入が続くかを見積もって判断します。
Q5. 著作権は著作者ごとにまとめて評価するのですか?
A. 原則は著作者ごとに一括して評価しますが、個々の著作物に係る著作権について、その著作権ごとに評価することも算式上認められています(通達148ただし書)。
まとめ
著作権は相続税の課税財産で、財産評価基本通達148の「年平均印税収入の額 × 0.5 × 評価倍率」で評価します。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 年平均印税収入は「前年以前3年間の印税収入の年平均額」を使う
- 0.5は算式に組み込まれた固定係数
- 評価倍率は、印税収入が見込める期間と課税時期に応じた基準年利率の複利年金現価率(複利表で確認)
- 収入が見込める期間は「精通者の意見等」で推算する
- 著作隣接権は148を準用、出版権は独立評価しない(営業権に含めるか評価なし)
著作権の評価は、印税収入の集計や残存期間の見積もりに専門的な判断が必要です。評価額が相続財産全体に与える影響も大きくなり得るため、実際の申告では税理士など専門家に相談することをおすすめします。
(出典: 相続税法第22条、財産評価基本通達148・149・154・154-2・4-4、令和7年分の基準年利率について(法令解釈通達)、国税庁 複利表)
*本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断については必ず専門家にご確認ください。*