不整形地の相続税評価はどう計算する?補正率の使い方をやさしく解説
相続で土地を受け継いだとき、その土地が四角い整った形とは限りません。三角形やいびつな形をした「不整形地」は、そのままの評価だと使いにくさが反映されず、実態より高い評価額になってしまいます。この記事では、国税庁の財産評価基本通達にもとづき、不整形地の相続税評価の仕組みと計算方法を、専門用語をかみ砕いて解説します。
そもそも不整形地とは何を指すの?
不整形地とは、正方形や長方形のような整った形ではない宅地のことで、三角地も含まれます。
相続税や贈与税では、土地(宅地)を評価する方法が2つあります。市街地でよく使われる「路線価方式」と、路線価が定められていない地域で使う「倍率方式」です。このうち路線価方式で評価する宅地では、土地の形や道路との接し方に応じて価額を調整する「画地補正」という仕組みがあり、不整形地の評価はその画地補正の一つです。
宅地は原則として、利用単位である1画地ごとに評価します。いびつな形の土地は使いにくく、整形地(整った形の土地)と同じ単価では実態に合わないため、補正率をかけて評価額を下げる扱いになっています。
(財産評価基本通達20、国税庁タックスアンサーNo.4602、No.4603、No.4604)
不整形地はどうやって評価するの?基本の計算式は?
基本の計算式は「奥行価格補正などをした後の1㎡あたりの単価 × 地積 × 不整形地補正率」です。
財産評価基本通達20は、不整形地の価額を、奥行価格補正から三方・四方路線影響加算までの定めによって計算した価額に、その不整形の程度・位置・地積の大小に応じた「不整形地補正率」を乗じて評価する、と定めています。
不整形地補正率は、次の2つの表を組み合わせて決めます。
- 付表4「地積区分表」:地区区分と地積の大きさから、A・B・Cのどの区分になるかを判定する
- 付表5「不整形地補正率表」:地区区分・地積区分(A/B/C)・かげ地割合の組み合わせで補正率を読む
補正率を求める具体的な計算方法は、通達で次の4つが示されています。
- 不整形地を区分して求めた整形地を基として計算する方法
- 不整形地の地積を間口距離で割って算出した「計算上の奥行距離」による整形地で計算する方法(計算上の奥行距離は、想定整形地の奥行距離が限度)
- 近似整形地を求めて基とする方法
- 近似整形地と隣接整形地を合わせた全体整形地の価額から、隣接整形地の価額を差し引いて計算する方法(差引き計算)
どの方法を使うかは、土地の形状によって使い分けます。
(財産評価基本通達20)
「かげ地割合」って何?補正率とどう関係するの?
かげ地割合とは、対象の土地を四角く囲む「想定整形地」のうち、実際の土地が占めていない余白部分の割合のことで、この割合が大きいほど補正率が下がり評価額も下がります。
いびつな土地をすっぽり囲む長方形(想定整形地)を思い浮かべてください。その長方形から実際の土地を差し引いた「余白」がかげ地です。かげ地が大きいほど土地の形がいびつということになり、評価上の減額が大きくなります。
かげ地割合は10%以上から5%刻みで65%以上まで13段階に区分されており、下の図のようなイメージです。
なお、通達の付表5の注記では、かげ地割合は所定の算式によって計算するとされています(一般には「(想定整形地の地積 − 評価対象地の地積)÷ 想定整形地の地積」という考え方が用いられます)。
(財産評価基本通達20、付表4・付表5)
補正率はどのくらい下がるの?具体的な数値で知りたい
補正率は最大で0.60まで下がり(普通住宅地区・地積区分A・かげ地割合65%以上の場合)、いびつな土地ほど評価額を大きく減らせます。
付表5「不整形地補正率表」は、地区を2つのグループに分けて補正率を定めています。代表的な「普通住宅地区」の値を抜粋すると、次のとおりです。
普通住宅地区の不整形地補正率(抜粋)
| かげ地割合 | 地積区分A | 地積区分B | 地積区分C |
|---|---|---|---|
| 10% | 0.98 | 0.99 | 0.99 |
| 20% | 0.94 | 0.97 | 0.98 |
| 30% | 0.90 | 0.93 | 0.96 |
| 40% | 0.85 | 0.88 | 0.92 |
| 50% | 0.79 | 0.82 | 0.87 |
| 60% | 0.70 | 0.73 | 0.78 |
| 65%以上 | 0.60 | 0.65 | 0.70 |
地積区分A・B・Cは、地区ごとに面積で決まります。普通住宅地区なら、500㎡未満がA、500㎡以上750㎡未満がB、750㎡以上がCです。同じかげ地割合でも、面積が小さいAのほうが補正率が低く(減額が大きく)なる傾向があります。
一方、高度商業地区・繁華街地区・普通商業併用住宅地区・中小工場地区はもう一つのグループにまとめられており、たとえばかげ地割合65%以上ならA=0.70、B=0.75、C=0.80となります。
(財産評価基本通達20、付表4・付表5)
ケーススタディ:普通住宅地区の土地はいくらになる?
たとえば普通住宅地区で地積400㎡、かげ地割合20%の土地なら、不整形地補正率は0.94となり、補正後の単価に地積と0.94を掛けて評価額を求めます。
国税庁の質疑応答事例でも、普通住宅地区・地積区分A・かげ地割合20%のケースで不整形地補正率0.94が用いられており、表の使い方を裏付けています。
具体的に組み立ててみましょう。数値の一部は前提として仮に置いています。
- 地区:普通住宅地区
- 地積:400㎡ → 500㎡未満なので地積区分A
- 想定整形地の地積:仮に500㎡とする
- かげ地割合:(500 − 400)÷ 500 = 20%
- 付表5より、不整形地補正率 = 0.94
このとき評価額は、
奥行価格補正後の1㎡あたり単価 × 400㎡ × 0.94
という形で計算します。路線価や奥行価格補正率、想定整形地の地積は、実際の土地の図形や所在地によって変わるため、個別に確認が必要です。ここでは補正率0.94の使い方を示すための仮の前提としています。
(財産評価基本通達20、国税庁 質疑応答事例「不整形地の評価――区分した整形地を基として評価する場合」)
間口が狭い・奥行が長い土地では補正率をさらに掛けられるの?
間口が狭い場合は、不整形地補正率に間口狭小補正率を掛け合わせられますが、その最小値は0.60が下限とされています。
付表5の注記では、間口狭小補正率の適用がある場合、不整形地補正率に間口狭小補正率を乗じた数値を不整形地補正率とすると定めています。ただし、その最小値は表に定める補正率の最小値である0.60が下限です。
また、奥行が長い(奥行長大な)土地については、選択により、不整形地補正率を適用せず、「間口狭小補正率 × 奥行長大補正率」で計算しても差し支えないとされています。つまり、次の2つのうち有利なほうを選べる形です。
- 不整形地補正率 × 間口狭小補正率(下限0.60)
- 間口狭小補正率 × 奥行長大補正率
不整形地補正率と奥行長大補正率を同時に併用することはしない点に注意が必要です。参考までに、普通住宅地区の間口狭小補正率は間口4m未満で0.90、4m以上6m未満で0.94などと定められ、奥行長大補正率は「奥行距離÷間口距離」が3以上4未満で0.99、8以上で0.90などとなっています(いずれも地区区分により値が異なります)。
なお、大工場地区の不整形地は原則として不整形地補正を行いませんが、地積がおおむね9,000㎡程度までのものは中小工場地区の区分で補正して差し支えないとされています。
(財産評価基本通達20、付表5注記、付表6・付表7)
不整形地と間違えやすい制度との違いは?
不整形地の評価は、無道路地・間口狭小地・地積規模の大きな宅地など、似た名前の別制度と条項が分かれており、それぞれ適用する補正が異なります。
混同しやすい制度を整理すると次のとおりです。
| 制度(通達) | 対象 | 補正の内容 | 不整形地補正との関係 |
|---|---|---|---|
| 不整形地(20) | いびつな形・三角地の宅地 | 不整形地補正率を乗じる | 本記事の中心 |
| 無道路地(20-3) | 道路に接しない宅地 | 不整形地等で計算した価額から、その価額の40%の範囲内を控除 | 不整形地評価を内包する別制度 |
| 間口狭小・奥行長大(20-4) | 不整形地・無道路地を除く宅地 | 間口狭小補正率・奥行長大補正率を適用 | 条項が別。重複時は付表5注記による |
| 地積規模の大きな宅地(20-2) | 三大都市圏500㎡以上ほか一定要件の宅地 | 規模格差補正率を乗じる | 不整形地補正と併用できる |
| がけ地等(20-5)/災害警戒区域(20-6) | がけ地・土砂災害特別警戒区域を含む宅地 | それぞれの補正率を適用 | 別条項の別補正 |
無道路地は「道路に接しない宅地」で、実際に利用する路線価を使って不整形地などの計算をした価額から、接道義務を満たす最小限度の通路開設に相当する部分として、その価額の40%の範囲内を控除します。地積規模の大きな宅地は、国税庁の質疑応答事例でも不整形地の評価(通達20)と併用する計算例が示されています。
(財産評価基本通達20、20-2、20-3、20-4、20-5、20-6、国税庁タックスアンサーNo.4620)
よくある質問
Q1. 不整形地だと必ず相続税評価額は下がりますか?
A. 形がいびつな宅地では、かげ地割合などに応じて1.00未満の不整形地補正率を乗じるため、整形地と同じ条件なら評価額は下がる方向に働きます。ただし、かげ地割合が小さいと補正率が1.00に近く、減額がわずかなこともあります。
Q2. 補正率はどこまで下がりますか?
A. 付表5の不整形地補正率表で定める最小値は0.60です(普通住宅地区・地積区分A・かげ地割合65%以上のケース)。間口狭小補正率を掛け合わせる場合も、下限は0.60とされています。
Q3. 間口が狭くて奥行も長い土地は、両方の補正を全部掛けられますか?
A. 不整形地補正率と奥行長大補正率を同時に併用することはしません。「不整形地補正率 × 間口狭小補正率(下限0.60)」と「間口狭小補正率 × 奥行長大補正率」のうち、有利なほうを選択して適用する扱いです。
Q4. 地積規模の大きな宅地の補正と、不整形地補正は一緒に使えますか?
A. 併用できるとされています。国税庁の質疑応答事例でも、不整形地について通達20と地積規模の大きな宅地の評価(通達20-2)を組み合わせた計算例が示されています。
Q5. かげ地割合はどうやって求めますか?
A. 付表5の注記では所定の算式で計算するとされ、一般には「(想定整形地の地積 − 評価対象地の地積)÷ 想定整形地の地積」という考え方が用いられます。想定整形地は、評価する土地の全体を囲む長方形を想定して求めます。
まとめ
不整形地の相続税評価は、「奥行価格補正などをした後の1㎡単価 × 地積 × 不整形地補正率」で計算します。ポイントは、地区区分と地積からA・B・Cの区分を判定し、かげ地割合とあわせて付表5で不整形地補正率を読むことです。普通住宅地区なら補正率は最大で0.60まで下がり、いびつな土地ほど評価額を減らせます。
また、間口が狭い土地では間口狭小補正率を掛け合わせられ(下限0.60)、奥行が長い土地では有利なほうを選択適用できます。無道路地・地積規模の大きな宅地・がけ地など、名前の似た別制度とは条項も補正内容も異なるため、混同しないことが大切です。実際の評価では、路線価や奥行価格補正率、想定整形地の取り方など個別の判断が必要になる場面が多く、迷ったときは一次情報である国税庁の財産評価基本通達を確認するのが確実です。
(出典:財産評価基本通達20、20-2、20-3、20-4ほか、付表4〜付表7、国税庁タックスアンサーNo.4602・No.4603・No.4604・No.4620、国税庁 質疑応答事例)