家庭用財産の相続税評価はどうする?家具・家電の計算方法をやさしく解説
相続が起きると、預金や土地だけでなく、故人が使っていた家具や家電といった「家庭用財産」も相続税の対象になります。とはいえ、中古の家具に値札はなく、どう金額をつければよいのか戸惑う方が多いところです。この記事では、家庭用財産の相続税評価の考え方と計算方法を、一次情報である財産評価基本通達に沿ってやさしく整理します。
そもそも家庭用財産は相続税の対象になるの?
家具・家電などの家庭用財産も、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産として相続税の課税対象になります。
国税庁の説明では、相続税がかかる財産とは「現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」とされています。家庭用の動産もこの「経済的価値のあるもの」に含まれるため、原則として申告の対象から外すことはできません。
税務上、家具・什器・電気製品といった家庭用の動産は「一般動産」というグループに分類され、財産評価基本通達 第6章(動産)第1節(一般動産)のルールで評価します。通達128では、動産の価額は「原則として、1個又は1組ごとに評価する」と定められています。
(出典: 国税庁タックスアンサー No.4105 相続税がかかる財産、財産評価基本通達128)
家庭用財産はどうやって評価額を決めるの?
原則は「売買実例価額・精通者意見価格等」を参考にして評価し、それが分からない場合は「新品の小売価額から償却費を差し引く方法」で評価します。
財産評価基本通達129は、一般動産の評価について次の二段構えを定めています。
- 原則: 売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。
- 例外(原則が難しい場合): 売買実例価額や精通者意見価格等が明らかでない動産は、その動産と同種・同規格の新品の課税時期における小売価額から、製造の時から課税時期までの期間の償却費の額の合計額(または減価の額)を差し引いた金額で評価する。
つまり、まずは中古市場での取引価格や専門家の評価があればそれを使い、それが見当たらない一般的な家具・家電については、次の式で計算することになります。
評価額 = 同種・同規格の新品の課税時期における小売価額 −(製造時から課税時期までの償却費の額の合計額 または 減価の額)
なお、償却費を計算する期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年として扱います(切り上げ)。
(出典: 財産評価基本通達129)
償却費はどうやって計算するの?
償却費は「耐用年数省令に定める耐用年数」を使い、「定率法」で計算します。
新品小売価額から差し引く償却費の求め方は、財産評価基本通達130で定められています。ポイントは次の2つです。
- 耐用年数: 耐用年数省令に規定する耐用年数による。
- 償却方法: 定率法による。
ここで注意したいのは、品目ごとの具体的な耐用年数の「年数そのもの」や、それに対応する定率法の償却率は、耐用年数省令の別表を確認しないと確定できないという点です。本記事では一次情報として年数・償却率までは確認していないため、具体的な数値は各自で耐用年数省令の該当別表を確認する必要があります。計算の「流れ」を示すため、以下では数値を仮のものとして扱います。
下の図は、家庭用財産を評価するときの判断の流れをまとめたものです。
(出典: 財産評価基本通達128〜130)
5万円以下の家具・家電はまとめて評価できるって本当?
はい。1個または1組の価額が5万円以下の家庭用動産などは、世帯ごとに一括してまとめて評価することができます。
財産評価基本通達128のただし書では、「家庭用動産、農耕用動産、旅館用動産等で1個又は1組の価額が5万円以下のものについては、それぞれ一括して一世帯、一農家、一旅館等ごとに評価することができる」と定められています。
一般家庭では、テーブル・椅子・食器・小型家電など、1点あたりの価値がそれほど高くない品が大半です。これらを1個ずつ厳密に計算するのは手間がかかるため、実務ではまとめて「家財一式」として一定額で評価するケースが多く見られます。一方、1点で5万円を超えるような比較的高価な家具や家電は、個別に評価することになります。
(出典: 財産評価基本通達128 ただし書)
区分ごとの評価方法を表で整理すると?
家庭用財産(一般動産)は原則と例外で評価方法が分かれ、一部の動産はそもそも別のルールで評価します。 全体像は次の表のとおりです。
| 区分 | 該当する通達 | 評価方法 | 一括評価の可否 |
|---|---|---|---|
| 家庭用財産(一般動産)の原則 | 通達129本文 | 売買実例価額・精通者意見価格等を参酌 | 1個・1組ごとが原則 |
| 上記が明らかでない場合 | 通達129ただし書 | 新品の小売価額 − 償却費(定率法) | 1個・1組ごとが原則 |
| 5万円以下の家庭用動産等 | 通達128ただし書 | まとめて世帯ごとに評価 | 一括評価が可能 |
| 建物附属設備等(暖房・冷房・給排水など) | 通達92(1)〜(3) | 附属設備等の評価による | 一般動産に含めない |
| 書画・骨とう品、たな卸商品、船舶等 | 通達132〜136 | それぞれの別ルールで評価 | 一般動産に含めない |
暖房・冷房・昇降・電気・給排水・消火・浴そうなどの建物附属設備等や、書画骨とう・たな卸商品・船舶といった動産は、通達128の括弧書きによって「一般動産」から除かれます。これらに家庭用財産の計算式をそのまま当てはめないよう注意が必要です。
(出典: 財産評価基本通達128括弧書き、92、132〜136)
具体的な計算例で見るとどうなる?
計算の流れは「新品小売価額 − 償却費 = 評価額」というシンプルなものです。 ここでは、耐用年数や償却率の具体的な数値は品目ごとに耐用年数省令の別表で確認が必要なため、金額を仮のものとして「計算の流れ」だけを示します。
【ケース1】1点5万円以下の家具・家電が中心の場合
一般的な家庭で、テーブル・椅子・食器・掃除機など、1点あたりの価額がいずれも5万円以下の場合は、通達128ただし書により世帯ごとに一括してまとめて評価できます。1点ずつ細かく計算するのではなく、家財一式として評価する形です。
【ケース2】1点5万円を超える家電を個別評価する場合(数値は仮の例)
1点で5万円を超えるような家電を、売買実例価額も精通者意見価格も分からないため通達129ただし書で評価するとします。仮に、同種・同規格の新品の課税時期における小売価額が20万円、製造時から課税時期までの定率法による償却費の合計が算定の結果14万円になったとすると、
評価額 = 20万円 − 14万円 = 6万円
という流れになります。ここでの「14万円」は説明のための仮の数値であり、実際には品目ごとの耐用年数(耐用年数省令の別表)と、それに対応する定率法の償却率を確認して算定する必要があります。数値を思い込みで当てはめないことが大切です。
(出典: 財産評価基本通達128〜130)
よくある質問
Q1. 中古の家具や家電にも本当に相続税がかかるのですか?
A. 金銭に見積もることができる経済的価値のあるものは相続財産に含まれるため、家庭用の家具・家電も原則として評価の対象になります。ただし1点5万円以下のものは世帯ごとにまとめて評価できるため、実務では家財一式として扱われることが多いです。
Q2. 家財の評価額はどうやって決めればよいですか?
A. 原則は売買実例価額や精通者意見価格等を参考にします。それらが分からない一般的な家具・家電は、同種・同規格の新品の課税時期における小売価額から、製造時から課税時期までの償却費(定率法)を差し引いて評価します。
Q3. 償却費の計算で使う耐用年数はどこで確認しますか?
A. 財産評価基本通達130により、耐用年数は耐用年数省令に規定する耐用年数を使い、償却方法は定率法によります。品目ごとの具体的な年数や償却率は耐用年数省令の別表を確認する必要があり、思い込みで当てはめないよう注意してください。
Q4. 書画や骨とう品も家庭用財産として同じ式で評価してよいですか?
A. いいえ。書画・骨とう品やたな卸商品、船舶などは通達128の括弧書きで「一般動産」から除かれ、通達132〜136など別のルールで評価します。家庭用財産の「新品小売価額 − 償却費」の式は当てはめません。
Q5. 償却期間に1年未満の端数が出たときはどうしますか?
A. 通達129ただし書により、償却費を計算する期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年として扱います(切り上げ)。
まとめ
家庭用財産(家具・家電などの一般動産)は、相続税の課税対象であり、財産評価基本通達128〜130に沿って評価します。ポイントは、(1)1点5万円以下のものは世帯ごとに一括評価できること、(2)原則は売買実例価額・精通者意見価格等を参考にすること、(3)それが分からない場合は「新品の小売価額 − 償却費(定率法・耐用年数省令の耐用年数)」で評価すること、の3点です。書画骨とうや船舶などは別ルールで評価するため、同じ式を当てはめない点にも注意しましょう。具体的な耐用年数や償却率は品目ごとに耐用年数省令の別表で確認し、数値を思い込みで決めないことが大切です。個別の判断に迷う場合は、税理士など専門家に相談することをおすすめします。
(出典: 財産評価基本通達128〜130、国税庁タックスアンサー No.4105 相続税がかかる財産)