区分地上権の相続税評価はどう計算する?地下鉄トンネルや電線の権利をやさしく解説
相続した土地の地下に地下鉄のトンネルが通っていたり、土地の上空に高圧電線が架かっていたりすると、その「地下や空中を使う権利」も相続税の評価対象になります。これが区分地上権(くぶんちじょうけん)や、それに準ずる地役権(ちえきけん)と呼ばれるものです。ここでは、こうした権利がある土地を相続したときに、どのように評価額を計算するのかを、専門用語をかみ砕きながら整理します。
そもそも区分地上権とは何ですか?
区分地上権とは、土地の「地下」や「空中」といった上下の範囲を区切って設定される、土地を利用する権利のことです。
たとえば地下鉄のトンネルを通すために、鉄道会社が土地の地下部分だけを使う権利を持つ場合が典型例です。土地の所有権は元の持ち主のままですが、地下の一定の深さから下は鉄道会社が使うといった形になります。
相続税の世界では、この区分地上権は「宅地及び宅地の上に存する権利」の一つとして評価される財産権と位置づけられています。財産評価基本通達の第2章第2節が、こうした権利の評価ルールを定めています。似たものとして、承役地(しょうえきち。制限を受ける側の土地)に設定される「区分地上権に準ずる地役権」も同じ節で評価対象とされています。
- 権利を持っている人(鉄道会社など)側 → その権利そのものの価額を評価
- 権利を設定された土地(宅地)側 → 土地の価額から権利の価額を差し引いて評価
このように、一つの土地をめぐって「権利側」と「土地側」の両方が評価されるのが特徴です。
(財産評価基本通達 第2節 27-4・27-5、貸宅地25(4)(5))
区分地上権の価額はどう計算しますか?
区分地上権の価額は「その土地の自用地としての価額 × 区分地上権の割合」で計算します。
ここでいう「自用地としての価額」とは、その土地に何の権利も付いていない、自分で自由に使える更地(さらち)としての評価額のことです。これに「区分地上権の割合」を掛けます。
この割合は、原則として「土地利用制限率」を基にした割合を使います。土地利用制限率とは、その権利によって土地の利用がどれくらい妨げられるかの程度を示す率で、公共用地の取得に伴う損失補償基準細則(別記2「土地利用制限率算定要領」)に定められた計算方法によって求めます。土地の階層別の利用価値などをもとに算定されますが、具体的な数値は個別の設定内容によって変わります。
地下鉄トンネルの場合の特例
計算式は次の通りです。
> 区分地上権の価額 = 自用地としての価額 × 区分地上権の割合(土地利用制限率を基とした割合)
ただし、地下鉄等のずい道(トンネル)の所有を目的として設定された区分地上権については、その割合を100分の30(30%)とすることができるとされています。土地利用制限率をいちいち算定しなくても、30%を使ってよいという簡便な取り扱いです。
一方、土地(宅地)側の評価は次のようになります。
> 区分地上権の目的となっている宅地の価額 = 自用地としての価額 − 上で計算した区分地上権の価額
権利の価額を土地の価額から差し引く、という関係になっています。
(財産評価基本通達27-4、質疑応答事例「区分地上権の目的となっている宅地の評価」)
「区分地上権に準ずる地役権」とは何が違いますか?
「区分地上権に準ずる地役権」は、特別高圧の架空電線や高圧ガス導管などのために設定され、建造物の設置を制限する地役権で、割合の決め方が区分地上権とは異なります。
具体的には、特別高圧架空電線の架設、高圧ガス導管の敷設、飛行場の設置、建築物の建築などの目的で、地下または空間の上下の範囲を定めて設定され、建造物を建てることを制限する地役権を指します。登記されているかどうかは問われません。
この地役権の価額は次の式で計算します。
> 地役権の価額 = 承役地である宅地の自用地としての価額 × 区分地上権に準ずる地役権の割合
そして、この「地役権の割合」は、土地の制限内容に応じて次の2区分で決まります。
| 制限の内容 | 地役権の割合 |
|---|---|
| 家屋の建築が全くできない場合 | 100分の50、又は承役地に適用される借地権割合の、いずれか高い割合 |
| 家屋の構造・用途等に制限を受ける場合 | 100分の30 |
「建物が全く建てられない」ほど制限がきついケースでは、50%と借地権割合を比べて高いほうを使うため、より大きく評価が下がる可能性があります。
承役地(制限を受ける土地)側の評価は、全体を1画地として評価した価額から、その承役地部分にかかる地役権の価額を差し引いて求めます。
(財産評価基本通達27-5、質疑応答事例「区分地上権に準ずる地役権の意義」「区分地上権に準ずる地役権の目的となっている宅地の評価」)
図解:権利側と土地側で評価はどう分かれる?
下の図は、自用地としての価額が、区分地上権(権利側)の価額と、権利を差し引いた宅地(土地側)の価額に分かれるイメージです。
具体的な計算例を見せてもらえますか?
地下鉄トンネルの区分地上権を例にすると、30%の割合を使ってシンプルに計算できます。
以下は、説明のために数値を仮に置いた計算例です(実際の金額は土地の評価額や設定内容で変わります)。
【前提】
- 自用地としての価額:1億円
- 地下鉄等のずい道の所有を目的とする区分地上権(割合30%を使用)
【計算】
- 区分地上権の価額 = 1億円 × 30% = 3,000万円
- 区分地上権の目的となっている宅地の価額 = 1億円 − 3,000万円 = 7,000万円
この結果、地下にトンネルを通す権利を持つ側では3,000万円、土地そのものを相続する側では7,000万円が、それぞれの相続税評価額の基礎になります。合計すると元の自用地価額1億円に戻る関係です。
なお、割合30%は地下鉄ずい道目的の区分地上権について通達で認められている値ですが、上記の金額の組み合わせはあくまで説明用の例示です。地下鉄ずい道以外の区分地上権や、区分地上権に準ずる地役権では、それぞれ別の割合(土地利用制限率を基にした割合や、50%・30%の区分)を使う点にご注意ください。
(財産評価基本通達27-4、25(4)、質疑応答事例04/10)
評価するときに注意すべき点はありますか?
固定資産税評価額に利用価値の低下がすでに反映されている場合や、権利が土地の一部だけに設定されている場合など、いくつかの調整ルールがあります。
主な注意点を整理すると次の通りです。
| 場面 | 取り扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 固定資産税評価額に利用価値の低下が反映済み | その宅地の利用価値の低下がないものとして評価した価額とする | 通達25-2 |
| 権利が1画地の一部だけに設定 | 自用地価額は、その設定部分の地積に対応する価額を使う | 通達27-4(注)2 |
| 承役地に地役権と借地権等が競合 | 借地権等は地役権設定に伴う調整をして評価し、両方を差し引く | 通達27-6(2)、25-3(3) |
たとえば、固定資産税評価額の計算の段階で、すでに地下の設備や特別高圧架空電線の架設などによる利用価値の低下が考慮されている場合には、二重に評価を下げないよう、利用価値の低下がないものとして評価した価額を用いることとされています。
また、承役地に「区分地上権に準ずる地役権」と「借地権」の両方が設定されているような競合ケースでは、調整のうえで両方の権利の価額を差し引く形になります。こうした複雑なケースでは、具体的な計算方法が個別の設定内容によって変わるため、専門家に確認しながら進めることが大切だとされています。
(財産評価基本通達25-2、27-4(注)2、27-6(2))
普通の地上権や借地権とはどう違いますか?
同じ「土地の上の権利」でも、通常の地上権や借地権は別の割合体系で評価され、区分地上権系とは計算方法が異なります。
- 通常の地上権:その目的となっている宅地は、相続税法上の地上権の評価の割合を使って権利分を差し引きます。
- 借地権:借地権割合(路線価図などに示される割合)を使って評価します。
- 区分地上権・区分地上権に準ずる地役権:土地利用制限率を基にした割合(地下鉄ずい道は30%、地役権は50%か借地権割合の高い方・30%)という、まったく別の体系で評価します。
名前が似ているため混同されやすいのですが、「地下鉄・電線・ガス導管などのために上下の範囲を区切って設定される権利」は区分地上権系、「建物を建てて土地を借りる権利」は借地権、と区別して考えると整理しやすくなります。
(財産評価基本通達25(1)(3)(4)(5)、27)
よくある質問
Q1. 土地の地下に地下鉄が通っているだけでも相続税評価に影響しますか?
A. 地下鉄のトンネル所有を目的とする区分地上権が設定されている場合、その土地(宅地)の評価は、自用地としての価額から区分地上権の価額を差し引いて計算します。地下鉄ずい道目的の区分地上権の割合は100分の30(30%)とすることができるとされています。
Q2. 区分地上権と「区分地上権に準ずる地役権」はどう違いますか?
A. 区分地上権は地下鉄のずい道などのために設定される権利そのもので、割合は原則として土地利用制限率を基に決めます(地下鉄ずい道は30%特例あり)。一方、区分地上権に準ずる地役権は、特別高圧架空電線の架設や高圧ガス導管の敷設などのために建造物の設置を制限する地役権で、割合は「建築が全くできない場合は50%か借地権割合の高い方」「構造・用途の制限の場合は30%」の2区分で決まります。
Q3. 高圧電線が土地の上空に架かっている場合はどう評価しますか?
A. 特別高圧架空電線の架設などのために区分地上権に準ずる地役権が設定されている場合、承役地(制限を受ける土地)は、全体を1画地として評価した価額から、その地役権の価額を差し引いて評価します。地役権の価額は、承役地の自用地としての価額に地役権の割合(50%か借地権割合の高い方、または30%)を掛けて求めます。
Q4. 固定資産税評価額にすでに利用制限が反映されている場合はどうなりますか?
A. その宅地の固定資産税評価額が、地下全体の設備や特別高圧架空電線の架設などによる利用価値の低下を考慮したものである場合には、二重に評価を下げないよう、その宅地の利用価値の低下がないものとして評価した価額を用いることとされています(財産評価基本通達25-2)。
Q5. 具体的な土地利用制限率の数値は自分で計算できますか?
A. 土地利用制限率は、公共用地の取得に伴う損失補償基準細則の別記2「土地利用制限率算定要領」に定められた方法で、土地の階層別の利用価値などをもとに算定されます。設定内容によって数値が変わり計算も複雑なため、正確な評価は税務の専門家に確認することが望ましいとされています。
まとめ
区分地上権や区分地上権に準ずる地役権は、土地の地下や上空を区切って使う権利で、相続税では「権利側」と「土地側」の両方が評価されます。基本の考え方は、自用地としての価額に一定の割合を掛けて権利の価額を求め、土地側はその権利分を差し引くというものです。
- 区分地上権:自用地価額 × 土地利用制限率を基とした割合(地下鉄ずい道は30%とすることができる)
- 区分地上権に準ずる地役権:承役地の自用地価額 × 割合(建築が全くできない=50%か借地権割合の高い方/構造・用途制限=30%)
- 土地側:自用地価額から権利の価額を差し引いて評価
固定資産税評価額への反映(25-2)や、権利が土地の一部のみの場合(27-4注2)、権利が競合する場合(27-6)など、調整が必要なケースもあります。具体的な割合や制限率の算定は個別性が高いため、実際の申告では最新の一次情報を確認しつつ、必要に応じて税理士など専門家に相談することをおすすめします。
(出典:財産評価基本通達25・25-2・27-4・27-5・27-6、国税庁 質疑応答事例「区分地上権の目的となっている宅地の評価」「区分地上権に準ずる地役権の意義」「区分地上権に準ずる地役権の目的となっている宅地の評価」「借地権と区分地上権に準ずる地役権とが競合する場合の宅地の評価」)