相続税の外国税額控除とは?在外財産の二重課税を防ぐ仕組みを解説
国外に財産があり、その財産に現地の法令で相続税に相当する税が課された場合、日本の相続税と外国の税が二重に課される状態が生じることがあります。これを一定の限度で調整するのが、相続税の外国税額控除です。この記事では、根拠となる条文や控除限度額の算式、適用の順序などを一次情報にもとづいて整理します(相続税法20条の2)。
相続税の外国税額控除とはどんな制度?
国外財産に外国で課された「相続税に相当する税」を、日本の相続税額から一定限度で差し引く制度です。
制度の正式名称は「在外財産に対する相続税額の控除」で、根拠は相続税法第20条の2です。実務上・申告書上は「外国税額控除」と呼ばれ、相続税申告書第8表「1 外国税額控除」で計算し、その控除額を第1表の「外国税額控除額」欄に転記します(国税庁「外国税額控除の適用を受けられる方へ」)。
条文上の適用の場面は、相続または遺贈(相続税法21条の2第4項に規定する贈与を含む)により「この法律の施行地外にある財産」(=国外財産)を取得した場合において、その財産についてその地の法令により相続税に相当する税が課せられたとき、とされています(相続税法20条の2本文)。
なお、以前は独立したタックスアンサーとして旧No.4033(在外財産に対する相続税額の控除)が存在しましたが、現在はアクセスすると404へ移動し、現存しません。現行で参照すべき一次情報は、相続税法20条の2、相続税法基本通達20の2関係、および相続税申告書第8表の手引きです。
控除できる金額はどう決まる?
控除できるのは「外国で課された相続税相当額」と「控除限度額」のいずれか少ない額です。
まず条文本文は、第15条から第20条までの規定により算出した相続税額から、外国で課された税額に相当する金額を控除した額をもって、その者の納付すべき相続税額とすると定めています(相続税法20条の2本文)。
ただし、無制限に控除できるわけではなく、ただし書で控除限度額が設けられています。控除限度額の算式は次のとおりです(相続税法20条の2ただし書)。
控除すべき金額がこの控除限度額を超える場合、その超える部分については控除しないとされています。結果として、実際に控除できる額は〔外国の法令で課された相続税相当額〕と〔控除限度額〕のいずれか少ない額になります。
算式の分子・分母の金額ベースは、いずれも債務控除後の金額です。分子の「当該財産の価額」は、国外財産の価額の合計額から当該財産に係る債務の金額を控除した額、分母の「課税価格計算の基礎に算入された部分」は債務控除をした後の金額とされています(相続税法基本通達20の2-2)。
外国で払った税額は何を根拠にいくらで換算する?
外国税額は、原則としてその納付すべき日の対顧客直物電信売相場(TTS)で邦貨に換算します。
控除する外国税額は、その納付すべき日における対顧客直物電信売相場(TTS)で邦貨換算した金額によります。ただし、送金が著しく遅延する場合を除き、国内から送金する日のTTSによることもできるとされています(相続税法基本通達20の2-1)。
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 控除限度額の算式 | 算出相続税額 ×(国外財産の価額 ÷ 課税価格に算入された部分) | 相続税法20条の2ただし書 |
| 実際に控除できる額 | min(外国で課された相続税相当額, 控除限度額) | 相続税法20条の2本文+ただし書 |
| 邦貨換算レート | 納付すべき日のTTS(送金日のTTSも可の場合あり) | 相基通20の2-1 |
| 算式の金額ベース | 分子・分母とも債務控除後の金額 | 相基通20の2-2 |
| 計算・記載する書類 | 相続税申告書第8表 →第1表へ転記 | 国税庁「外国税額控除の…案内」 |
他の税額控除との適用順序は?
在外財産に対する相続税額の控除は、各種税額控除のなかで最後(6番目)に適用します。
各種税額控除の適用順序は、①贈与税額控除、②配偶者の税額軽減、③未成年者控除、④障害者控除、⑤相次相続控除、⑥在外財産に対する相続税額の控除の順で、在外財産控除は最後に位置づけられています(相続税法基本通達20の2-4)。
このため、先順位の控除で相続税額が零になる、または控除しきれない場合には、後順位の控除は行わず、その者の納付税額はないものとなります(相基通20の2-4(注))。
また、控除限度額を超える外国税額については「その超える部分は控除しない」とされ、条文上、翌年への繰越しや還付の規定はありません。控除は当年の算出相続税額の範囲内で打ち切られる点に注意が必要です(相続税法20条の2ただし書、相基通20の2-4(注))。
よくある質問(FAQ)
Q1. 外国で払った相続税は全額を日本の相続税から引けますか?
A. 全額とは限りません。控除できるのは、外国で課された相続税相当額と、条文の控除限度額のいずれか少ない額です(相続税法20条の2本文・ただし書)。限度額を超える部分は控除されません。
Q2. 控除しきれなかった外国税額は翌年に繰り越せますか?
A. 一般論として、条文には翌年への繰越しや還付の規定は置かれていません。控除は当年の算出相続税額の範囲内で打ち切られる仕組みになっています(相続税法20条の2ただし書、相基通20の2-4(注))。
Q3. 外国の税額はどの時点のレートで円に換算しますか?
A. 原則として、その税を納付すべき日の対顧客直物電信売相場(TTS)で邦貨換算します。送金が著しく遅延する場合を除き、国内から送金する日のTTSによることもできるとされています(相基通20の2-1)。
Q4. どの書類で計算しますか?以前あったタックスアンサーはどこですか?
A. 相続税申告書第8表「1 外国税額控除」で計算し、控除額を第1表へ転記します(国税庁の案内)。かつての旧No.4033は現在404となり現存せず、一次情報は相続税法20条の2・基本通達20の2関係・第8表の手引きです。
Q5. 国外財産に対する外国の税なら、どんな税でも対象になりますか?
A. 対象は「その地の法令により相続税に相当する税が課せられたとき」とされています(相続税法20条の2本文)。個々の外国税が「相続税に相当する税」に当たるかの判定はケースにより異なり得るため、実際の適用は具体的な事情に応じた確認が必要と考えられます。
まとめ
- 根拠条文:制度の正式名称は「在外財産に対する相続税額の控除」で、根拠は相続税法20条の2です(申告書上は外国税額控除)。
- 控除額の考え方:外国で課された相続税相当額と控除限度額のいずれか少ない額が控除できます。
- 控除限度額:算出相続税額 ×(国外財産の価額 ÷ 課税価格に算入された部分)で計算し、分子・分母は債務控除後の金額です。
- 邦貨換算:外国税額は原則として納付すべき日のTTSで換算します(送金日のTTSも可の場合あり)。
- 適用順序:在外財産控除は各種税額控除の最後(6番目)で、先順位で控除しきれば後順位は行いません。
- 超過分の扱い:限度額を超える部分は控除されず、繰越し・還付の規定は条文に見当たりません。個別の判断は具体的な事情に応じた確認が望まれます。